図書室の主 | ナノ

番外編

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「明日のデートはどこ行く?」
「俺んち」


 たまには趣向を変えてみようと寛樹に訊いてみたが返ってきたのはいつも通りの答えで苦笑するしかない。


「なんでそんなわかりきったこと訊くの?」
「わかりきっていても、訊きたい気分だってあるの」
「へえ……」


 なんだその物珍しそうな顔は。

 大げさに溜め息を吐いて、彼から隠し撮りアルバムを取り上げる。


「ああっ! なんてことするんだよ!」
「デートの最中に他の男見ないでほしいね」
「甘えんぼ」
「ヒロが非常識なんだ」
「亮の前だからしてるのに」


 視線がかちあい、ぱちり、と火花が散った。


「亮介、悪かった。次のデートも亮の家でいいよ」
「……そういうことじゃない」


 まったくこの頓珍漢な幼馴染は。

 腰を抱き寄せ、髪を梳く。

 亮介より頭一つ分小さい彼は腕の中にすっぽり収まって抱きしめている方にとっても心地よい。


「ヒロも構えばかっこいいのにねえ」
「亮に言われたくない」
「俺は構ってるよ」
「構ってもかっこよくない」


 ひどいことを言う恋人を小突いて、少しだけ髪を引っ張った。

 今日が過ぎて、明日の放課後もきっと亮介の家でデート。

 彼はきっとアルバムに夢中だろうし、自分はきっと静かに本を読んで過ごすのだと思う。


「亮介、好きだよ」
「なんだよそれ」
「言いたくなったから。ほら、亮ちゃんは?」
「好き、だよ」


 いつか、自分から言えたらいいのに。


おわり。



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