本編
「で? お前は俺にどんな答えを求めているんだ?」
事情をすべて話すと、クラスメイトの緒方は呆れた目で亮介に問う。
それとは対照的に、緒方の首に抱きついたままの恭介は肩越しに真剣な目をしている。まあ、恭介は幼稚園時代からの付き合いだ。多少なりとも心配してくれているのだろう。
目が覚めても状況が変わっているはずがなくて、学校に行きたくない、なんて小学生みたいなことを考えて、それでも亮介が学校へ向かったのは幼稚園年少からの皆勤がこんなことで崩れるのが悔しかったからだ。
クラスに着き、寛樹が何度かこちらをじっと見ていたが話す気はなく、クラスメイト達も普段一緒にいるふたりが距離を置いているのをどことなく感じ取ったようだった。
いつもなら寛樹と一緒に食べる弁当もひとり。
寛樹はと言えば別のクラスメイトと食べていた。
喧嘩なんて、久しぶりすぎてどんなふうに仲直りすればいいか忘れてしまった。
おまけに今回は自分は悪くないと亮介は信じている。
そんなことをぼんやり考えていたらクラスメイトふたりが教室を去るのを見つけて、こいつらしかいないと追いかけた。
口が堅く、話を最後まで聞き丁寧にアドバイスをくれる。
なんで思いつかなかったんだろう。
そして冒頭に至る。
「だいたい、お前らは不健全なほどべたべたしすぎだ。これくらいでちょうどいい」
「今の緒方に言われたくないな」
ぽろりと本音を言うと緒方の眉が吊りあがった。
「これは樋山が勝手にくっついてきたんだ」
「えー、緒方だって拒否してないじゃーん」
うっとおしそうに恭介を睨む緒方と全く堪えていない恭介。
亮介が何も言えずにいると、緒方は恭介を蹴りあげ大きく伸びをした。
こちらへ向き直った緒方はいい笑顔で、亮介はちょっとだけ恭介に同情する。
「清水亮介は岩本寛樹が好き、なのか?」
はっきりと頷いた。
「なら、今度は清水が岩本を振り向かせる番じゃないのか?」
「それ、は」
それができたらここまで悩んでいない。
だって、それが寛樹にとって迷惑だったらどうなる。
「でも、清水は岩本が好きなんだろう? それが答えじゃないのか?」
「そうそう。俺だって緒方に四年も振られ続けてるけど諦めないよ?」