本編
幼馴染というのは厄介だ。
更には、幼稚園入園以来13年間同じクラスというのが厄介さに拍車をかけていると亮介は思う。
せめてただのずっとクラスが同じな腐れ縁のクラスメイト、というポジションだったらと思うが亮介と寛樹は生まれる前から付き合いがあった。
それもこれもお互いの両親ともに学生時代から仲が良くで家が近所で同じ年に生まれてしまったせいだ。
父親が寛樹の父親と遊びに行くときは亮介も連れていかれ、寛樹の母親は当然のように寛樹をつれて亮介の家に遊びに来る。
お陰でお互いのことで知らないことの方が少ない。
何で喜んで何に悲しむのか、なんて考えなくていい。
嫌な予感がする。そして亮介の寛樹に関するそれはあまり外れない。
溜め息と共に音楽室の方向を見る。
建て方の関係で音楽室そのものは現在、亮介がいる教室からは見えない。
今日は、寛樹の合唱部の高2の引退パーティー。
高1は寛樹一人しかいないため、ここ数日はその準備に追われている彼を亮介は見ていた。
先輩や後輩が嫌いでもそれとこれは別、と寛樹は諦めたように笑いながら準備をしていた。
昨日は、飾り付けられた部室である音楽室を亮介に見せてくれて、一人でよくここまでできたものだと感心すると同時に彼の先輩たちに嫉妬した。
彼から聞いた終了予定時間はとっくに過ぎていて、この教室で待ち合わせした時間も大幅に過ぎた。
まさか倒れてるわけじゃないよね、と一度不安になったらもう居ても立っても居られない。
教室の電気を消すこともせずに亮介は音楽室へ駆けだした。
音楽室の防音扉を開く。
一人には広すぎる音楽室の中心で、こちらに背を向け床にへたり込む寛樹が目に入るや否や抱きしめた。
「亮介ぇ」
寛樹は泣きそうに歪んだ顔で笑った。
「俺、先輩方が嫌いで亮のことが好きなのに、先輩のことが、好きかもしれない」
一瞬、何を言われたかわからなかった。
「嫌われてることも知ってるし、向こうだって俺が先輩後輩のこと嫌いなの知ってるくせに――好きなんだ。わかっちゃった」
頭が真っ白になった。
だって、俺に告白してきたのは寛樹じゃないか。