本編
亮介の恋人はちょっと変わっている。
「ああ、やば……。あっ、これもいいな。あどけなさと初々しさ……いいね……」
にやにやしながら表に『隠し撮り』と記されたアルバムを繰る目の前の男が恋人ではあるが、時々なんで自分が好きになってしまったのか疑問に思う。
恨めしげに寛樹を見つめたが彼は気づいていない。
無視や亮介の気を引くためではない。
本当に別世界へ飛んでいる。
はあと溜め息をついて亮介はどうしてこうなったかを振り返った。
今はデートの最中で。
彼のお気に入りの喫茶店に入って。
入るなり彼が取り出したものは『隠し撮りアルバム』。
被写体は彼の部活の先輩と後輩。ちなみに男。
ねえ君が好きなのって俺だよね!? 告白してきたのも君だよね!? と叫びたくなるのは普通だと思う。
寛樹が好きなのは亮介だとわかっている。
わかっているけど、なにもデートの最中に他の男の、しかも嫌いな男の写真を嬉しそうに見なくてもいいじゃないか。
――好きなら、ともかく。
「ヒーロ」
寛樹は気づかない。
寛樹が嫌いながらも好きになろうとしている彼らに少し嫉妬した。
少しだけ。
おわり。