図書室の主 | ナノ

番外編

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 街を歩いていたら、ばったり悠太と会った。


「この後、暇ならデートしない?」


 軽い女ならほいほいついてきそうな笑みも悠太には通じない。


「久しぶりに会ってそれか。俺を女扱いするな」
「ごーめんって。遊びに行こうよ」


 案の定、吐き捨てられた言葉に胸が痛んだ。

 少しくらい意識してくれてもいいのに、なんて思っても仕方がないことだけれど。


「悪いが、この後約束があるんだ」
「あ、そう、なんだ」


 更にがっかりするようなことを言って、彼が時計をちらりと見た。面白くなくて、つい刺々しい口調になってしまう。


「悠太。彼女でもできた?」


 からかい半分自虐半分で彼に訊ねると悠太の表情が強張った。これはまずかったかもしれない。いくら自分が面白くなくても悠太を傷つけたいわけじゃない。


「あ、ごめん。嫌なら答えなくていいんだ。――じゃあね」


 踵を返し、ひとときの再開から日常へ戻る。

 未練がましく振り返ると、彼はじっと俯いていて駆けよりたい衝動にかられる。

 好きすら伝えていないのに。

 心の内で己を嘲笑いながら足だけが勝手に動く。

 と、肩を叩かれた。期待してはいけない。

 そうわかっているのに、胸が高鳴る。


「暁、やっぱりデートしよう」
「俺を女扱いしないでほしいね」
「……真似するな」


 振り返れば息を切らせた悠太がそこにいて、嬉しくてつい素っ気なくなってしまった。

 すると悠太は片目だけ眇めて、なんだか嫌な予感。


「ほら、行くぞ」


 暁の腕に悠太の腕が絡まる。さすがにそこまで期待していなかったので一気に体温が上昇してしまった。


「ちょ、離れて」
「嫌だ。デートっつったの誰だよ」
「俺だけど、ちょ、その」


 声にならなくて空いてる手で顔を覆ったから、悠太の顔が真っ赤だったことなんて気づかなかった。


おわり。



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