図書室の主 | ナノ

本編

しおり一覧

 緒方がどんなメールをくれるのかすごく気になる。

 気になるけど待つことができなくて、ならばこちらから送ろうとケータイを開いたはいいものの何を打てばいいかわからない。

 悶々と悩む時間がもったいなくて、まずはアドレス登録と彼だけの着信音を設定。しかしそれはすぐに終わってしまう。

 テスト送信、じゃ素っ気なさすぎる。

 初メールだよ! はキャラじゃないし……。

 文面を悩み続けて3時間、樋山は音を上げた。

 すごく疲れてしまった。

 まあいっか。

 必要なときに、何気なく送れるだろう。

 そう思い風呂に入ろうとケータイを手放したとき、彼の着信音が鳴った。

 幻聴かと思ってケータイを見ると、ランプが点滅していて心臓が高鳴った。

 震える手で受信箱を開く。


-------

 From:緒方
 Subject:
 樋山、いつもありがとう。
 おやすみなさい。

-------


 簡潔な文章ではあるけれど、じわりと胸の奥が熱くなった。

 簡潔な文には簡潔に、思ったままを書こう。

 そう思ったらすぐに指が動いた。


------

 To:緒方
 Subject:
 おやすみ。大好きだよ。

-------


 証拠に残る、と思って送信を躊躇った。

 でも、緒方も俺もだ、って言ってくれたし、と自らを励まして送信ボタンを押す。


「明日、どうなるんだろうなあ……」


 布団に潜り込んだとき浮かんだのは、緒方のやわらかい微笑だった。


おわり。

*前次#
backMainTop
しおりを挟む
[7/27]

- ナノ -