本編
緒方がどんなメールをくれるのかすごく気になる。
気になるけど待つことができなくて、ならばこちらから送ろうとケータイを開いたはいいものの何を打てばいいかわからない。
悶々と悩む時間がもったいなくて、まずはアドレス登録と彼だけの着信音を設定。しかしそれはすぐに終わってしまう。
テスト送信、じゃ素っ気なさすぎる。
初メールだよ! はキャラじゃないし……。
文面を悩み続けて3時間、樋山は音を上げた。
すごく疲れてしまった。
まあいっか。
必要なときに、何気なく送れるだろう。
そう思い風呂に入ろうとケータイを手放したとき、彼の着信音が鳴った。
幻聴かと思ってケータイを見ると、ランプが点滅していて心臓が高鳴った。
震える手で受信箱を開く。
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From:緒方
Subject:
樋山、いつもありがとう。
おやすみなさい。
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簡潔な文章ではあるけれど、じわりと胸の奥が熱くなった。
簡潔な文には簡潔に、思ったままを書こう。
そう思ったらすぐに指が動いた。
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To:緒方
Subject:
おやすみ。大好きだよ。
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証拠に残る、と思って送信を躊躇った。
でも、緒方も俺もだ、って言ってくれたし、と自らを励まして送信ボタンを押す。
「明日、どうなるんだろうなあ……」
布団に潜り込んだとき浮かんだのは、緒方のやわらかい微笑だった。
おわり。