図書室の主 | ナノ

本編

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 暁にメールを送った瞬間まで冷静なつもりの悠太だったが、ウインカーとワイパーを間違えたときには自身の動揺を認めざるを得なかった。

 急に言ったものの、暁が絶対にコロッケを準備してくれている確信はある。

 じゃあ何が悠太を動揺させているのかと言えば、これから後には引けないことをしようとしているからで。

 信号が赤になった。ブレーキとアクセルを踏み間違えそうになり、このまま事故を起こしては洒落にならないので休憩しようと路肩に寄せる。

 出会ってから10年以上。

 暁とは親友だと思う。それでいいと思っていた。

 けど、もう我慢できない。

 親友を失うことになってもこの想いを秘めたままでいるよりはましだ。

 今日、当たって砕ける。

 せめて自分が好きだったことくらい知っててほしいと思うのは傲慢だと悠太は思うがこれが、今まで散々困らせてきたあいつへの、最後のわがまま。

 コロッケを指定したのは――本人に言うつもりはないが、以前食べた暁の作ったコロッケが好きだったからで。

 親友を失うことに未練はない。たぶん。


おわり。



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