本編
中から出てきたのは大量の写真。
――岸本が11月まで、秋一に送り続けた夕食の写真すべてが現像してあった。
最後の11月30日の写真の裏には彼らしいコメントが添えられていて、今度こそ声を抑えきれず叫んだ。
叫んでも叫び足りなくて、喉が枯れそうだったけれど叫び続けた。
彼の特徴であるブルーブラックの0.4のインクはまだ乾ききっていない。
“今度、気の置けない友人たちで集まって岸本の手料理を食べよう”
あんな言葉を吐いたのに、泣かせたのに、まだ友人でいていいのか。
お前が欲しいのは恋人で。
俺はお前の親友でいたくて。
逃げる余地を残すのか。
俺を逃がしてもいいのか。
友人、と言えるのはいつものメンバーでいいんだよね?
俺はもちろん親友だよね?
でも、秋一が欲しいのは平穏と恋人――っ!
整理のつかない感情は声とともにぶつりと途切れた。
息が苦しくて肩で息をした。
秋一の字を眺める。自分の料理を眺める。
これでもう後に引けないねえ、なんて言ってる場合じゃない。
今度会うときはふたりとも笑顔で。
今度別れるときにも笑顔で。
そのために今、やるんだ。
おわり。