図書室の主 | ナノ

Lovely days

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 リビングに残されたふたりは顔を見合わせた。
「恭介」
「ったく本当に執念深いなあ、きみは」
 当然の権利を主張するように名前を呼ばれ、恭介は彼の首に腕を回す。
 チョコの味はすぐに消えた。

*****

 式には新郎の親友ではなく新婦の親族として参列した。
 披露宴での新郎の招待席には恭介の知り合いもたくさんいたけれど、殆ど話すことはできなかった。
 みじめかもしれない。だけど恭介は彼の普通の幸せを願っている。


 すみれが亡くなってから、一夜の温もりを求めて彼は夜の街を彷徨うようになった。
 探す相手は決まって、男。これが彼を好きになった自分の罪かと恭介は目の前が真っ暗になった。
「真司、きみは……」
 ようやく捕まえたとき、彼は人形のようだった。


「ごめん、恭ちゃん。きみを見ていたくないんだ。――その子も」
 すみれの兄でもある恭介の従兄は目を逸らして言った。
 幼い頃から双子に間違われるほどそっくりだったすみれと恭介をすみれの兄は疎んだ。
 そして3姉弟の中ですみれの血を濃く引いた葵をすみれの兄は拒絶した。
 実の兄とも慕った人に拒まれ、恭介は自身を嘆くよりも葵への申し訳なさで居たたまれなくなった。

*****

 週末は恭介の伯母夫婦のところへ葵たち3姉弟を連れていく。彼らにとっては祖父母だ。
 いつか自分や真司に何かあったときに困ることがないようにと、すみれが亡くなった直後から彼らの祖父母のところへ定期的に連れて行っていた。
 彼の両親のところへも、もちろん連れていく。



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