図書室の主 | ナノ

Lovely days

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 タートルネックを着られる季節でよかった。
 姿見を覗くと、昔ほどすみれに似ていない自分が映っている。
 すみれが亡くなった直後は、鏡を覗きこむたびに泣いていた。
 鏡の中の彼女に答えを求めた。
「すみれちゃん……」
 そっと姿見に触れる。
 きみの子たちは元気だよ。
 彼も元気。
 いつも見守ってくれてるから、わかってるだろうけどさ。
『えーっ、恭ちゃんはどうなの』
 ふと耳に蘇った彼女の声に苦笑し、鏡の中の自分へ手を振った。

*****

 すみれが結婚すると聞いた。
 その直後に彼から結婚すると聞いた。
 すみれの吉報に喜び、彼の知らせに痛む胸を無視して祝福した。
「おめでとう」
「あのね、恭ちゃん。実は恭ちゃんの同級生なの」


「なんだ、真司だったのか。すみれちゃん、俺、真司と親友なんだよ。真司も水臭いなあ、どうして教えてくれなかったの」
「……似てたけど、お前の従妹だとは思わなかった」
 ねえ、真司。
 俺の面影を傍に置くつもりだったって自惚れてもいい?


 歳を重ねるにつれて、覚悟していた。
 いつか彼に生涯の伴侶となる女性が現れたときは潔く身を引くと。
 できればそれが素敵な人であればいいと何度も願った。
 まさかふたりが結婚するなんて思っていなかったけど。
 最愛の従妹と親友の結婚なんて、最高のハッピーエンドじゃないか。
 



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