図書室の主 | ナノ

王子は現在夢の中

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 物騒な言葉に眩暈がする。
『なあ、暁。気づけよ』
 くくっと喉の奥で彼が笑う。なんだかとても愉しそうだ。
『いつか歳を取る。後悔したって遅い。考えろ。それまで朝陽ちゃんは預かる』
「ねえ、緒方」
 大きなお世話だよ。これ以上、俺の気持ちを揺さぶらないで。
「きみ、チャイルドシートなしで運転してるでしょ。捕まるよ」
『……あ』
 ぶつり。
 通話終了。ああ、すっきりした。さて、これからどうしようか。
 悠太に謝りに行く? なにを。それに、中途半端なことはしたくない。
 あの幼馴染のことだから、朝陽をひどいめに遭わせることはないとわかっている。
 暁が警察に通報したらどうするつもりなのだろうと考えながら椅子に座る。
 悠太と仲直りしろという意味か。
 それとも、喧嘩別れだけはやめておけという意味か。
 おそらく後者だろう。
「ほんとに大きなお世話だなあ……」
 悠太と暁の関係は修復することはないと暁がいくら言っても緒方は聞こうとしないはずだ。
 そうなると、悠太から言ってもらうしかない。

*****

 珍しい人からの着信だが、誰の差し金かわかってしまった悠太は取るべきかどうか悩み、そして電話を取った。
『もしもし草場? 樋山です』
 忌々しい、緒方の恋人。中学時代のクラスメイトでもある。
「久し振り。どうしたの?」
『今から草場の家に行くから』
「……え?」
『お風呂、溜めておいてね』
 一方的に用件を告げて切れた電話。
 まさか、緒方とキスしたのがばれてこれから修羅場なのだろうか。
 あれは緒方が迫ってきたのであって、悠太が望んだわけではないと言えば信じてもらえるだろうか。



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