硝子の棺は部屋の中
即答すると、悠太が探るように目を細めた。
「迷惑?」
「迷惑だ。朝陽はまともに育てるんだ、父親である俺が男を愛することはできない」
「俺、愛してなんて言ってないよ」
悠太は笑おうとした。けれど、それは失敗した。彼の唇が泣きそうに歪む。暁の喉の奥が痛くなってきた。
「そりゃあ、愛してほしいけど」
「なんで。なんでそんなことを言うの。利用したことを怒ってんなら謝る、でも今は待って」
「暁」
緒方が窘めるように暁を呼ぶ。はっとして口を噤む。悠太は苦笑していた。
「俺、暁に利用されたなんて思ってないよ。暁を愛してるから、もういいんだ」
「――帰れ」
絞り出すような暁自身の声、もう何もかもが嫌だ。
「帰ってよ、ふたりとも」
緒方が悠太の腕を取る。そのままふたりは出ていった。
外から鍵のかかる音がした。緒方に預けた鍵だろう、きっと。
「朝陽。俺は、強くなるから」
無責任に、泣いてしまいたい。
けれど、もう涙も出ない。
空腹なのか、朝陽が泣きだした。
もう、俺を放っておいて。