図書室の主 | ナノ

硝子の棺は部屋の中

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・浪人しているため、緒方より2歳年上である
・小学生の頃、父が蒸発(借金あり)
・妹がふたりいて、バイトで生活費を稼いでいる
・奨学金を取っているが殆ど生活費
・勤勉、真面目
・浮いた話は一切ない
 明らかに隠し撮りな写真を、暁は食い入るように見つめた。
 緒方が自身のことを緒方と記す癖が直っていないことを笑おうと思ったのに、実際は声すら出ない。
 悪い人間だったらよかったのに。
 もっと、女を性欲処理としか思っていないような男なら恨むことができたのに。
「真朝は」
 この男のために黙ってるんだね、と言おうと思って、声にならない。
 ふと、横から抱きしめられた。
「暁」
 ぽんぽん、と優しく頭を撫でられ、ふっと涙腺が緩む。
 暁は緒方の胸に額を押し付け、声を上げて泣いた。
 泣き止んだとき時計を見ると、実際に泣いていたのは5分ほど、しかし暁自身はずっと泣き続けていた気がする。
 悠太にも真朝にも相談できなかったことが、自分でもわからないくらいにストレスになっていたらしい。
「俺は」
「ああ」
「ずっと真朝に甘えてた」
「そうか」
「これは、俺の責任だから」
 朝陽。決めた、名前は朝陽だ。男の子であっても、女の子であっても、朝陽。
 暁の子どもであってもおかしい名前ではない。
 朝陽、1年だけ時間をくれ。大学を卒業しないと就職も儘ならない。
 だけど、ちゃんと卒業して就職した後には責任を持って、俺が育てるから。
 暁の静かな決意を見透かしたように、緒方は一度、頷いた。
「洗面所借りていい?」
「どうぞ。タオルは奥の棚」
「ありがと」



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