図書室の主 | ナノ

番外編

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「緒方! デートしよう」


 そう叫ぶと、緒方は憐れむようにこちらを見たがそんなことではくじけない。

 彼が本を置き正座したのでつられて樋山も正座になる。緒方は真顔で樋山を諭した。


「いいか、樋山。デートは友達同士ではいかない」
「でっ、でも、女の子同士だったら友達同士でもふざけてデートって言うよね!」
「安心しろ、俺もお前も男だ」


 きっぱりと言い切った彼の手が本に伸びたので慌ててその手を押さえる。


「じゃあ、なんだったらいい?」
「外出」


 なんとまあ素っ気ない。それが顔に出たのだろう、彼は溜め息を吐いて、それでも樋山に向き合ってくれた。


「で、どこに外出するんだ」
「……普通に、友達と遊びに行くって言ってくれないかな」
「長い」


 なんだか泣きたくなってきたが彼の気が変わらないうちに検討をつける。


「俺の家かー、緒方の家かー、あ、緒方はどこに行きたい?」
「本屋」


 即答だった。それ、友達同士でも行かないと思う。心が折れそうだ。


「あのー緒方くん、俺、もっといちゃいちゃしたいんだけど……」
「友達同士ではいちゃいちゃしない。じゃあ、遊園地か映画館か?」


 あっさりと言った彼に固まってしまった。それってむしろ恋人同士で行くところではないのか、いや、緒方も実は本当は俺のことが好きなのかも。そんな樋山をどう思ったのか緒方はさらに続ける。


「俺は友達がいなかったから基準がわからない。樋山が決めてくれ。あ、でも普段樋山が過ごしている空間を見たい気もする」


 照れたように言われて、もう抑えきれない。


「緒方! 好き!」
「苦しい、離れろ……。知ってる」


 がばっと彼に抱きつきじゃれると彼も頭を撫でてくれる。

 ふたりで過ごせる場所だったら、もうどこでもいい。


おわり。



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