真っ赤な林檎は籠の中
緒方はにやりと笑った。
「お前の2番目の恋に、乾杯」
互いに譲らない、澄んだ固い音がした。
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身勝手な彼に復讐したいと思う。
けれど残念なことに悠太は合法的に暁へ復讐する手段を持っていない。
だから悠太は夢想するに留めておくのだ。
彼が悠太の腕の中で息絶える瞬間を。
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繁華街のデパートの最上階のレストラン。
あまり行かないのに、そんな日に限って神さまは悪戯をする。
レストラン手前の子ども服売り場で、嬉しそうにベビー服を見る女性がいた。
その背後で彼が赤ん坊を抱いていた。とても幸せそうだった。
悠太はじっと暁を見つめていたが、彼は手元の赤ん坊に時折微笑みかけるだけで悠太には気づかない。
なんだか無性に苛々した。
冷静になって考えると、彼は未婚の父となり世間の冷たい視線を浴びるのだ。
いい気味だと思っていいくらいなのに、なんであんなに幸せそうな顔をする。
食欲は一気に失せた。
合法だろうが非合法だろうが、知ったことではない。
ただ自身の自尊心を満たすために。
悠太がこれからの人生を明るく生きていくために。
暁とその娘にはその命を以て償ってもらおう。
人はいつからだってやりなおせる。
だから。
彼を失っても平気。
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さて、どんな手段を用いるかが問題だ。