番外編
クリスマスだからなにかお菓子を作るよ。
瑞樹が言うと、秋一は眉間に皺を寄せた。
キリスト教徒でもないのになんでクリスマスを心待ちにするんだ。そもそも、イエス・キリストの生誕を祝う日だろう、デートなんて馬鹿馬鹿しい。
「秋一、僻みっぽく聞こえるよ」
テーブルに頬杖を突きくどくどと述べる秋一に苦笑しつつ、瑞樹はメモを構える。
「じゃあ、どうぞ」
「杏仁豆腐」
「うん」
「フルーツポンチ」
「うん」
「ガトーショコラとシフォンケーキ。あ、プレーンで」
「はいはい。で、サワークリーム、と」
秋一のリクエストをメモしていた瑞樹は言ってやりたい。
いつもより瞳の輝きが増しているときに言うのが気が引けるけれど。
「クリスマス、関係ないよね?」
「おいしければいいんだ」
腕を組み厳かに告げる秋一は格好いいのに発言が残念だと思う。
「みんな、そうなんだよ」
「おいしければいい?」
「……そうじゃなくて。好きな人と共に過ごすのは幸せでしょう?」
秋一は明るい茶の瞳を一度大きく瞬いた。
「僕は」
「うん」
「特別な日じゃなくても瑞樹といたら幸せで」
恥じらうように目を伏せつつ言う秋一に少し感動した。
「おいしいものが食べられたら更に嬉しい」
あ、やっぱり食欲はついてくるんだ。
「瑞樹」
にやりと秋一が笑う。
「僻むな、僕は瑞樹が一番好きだ」
「……食われるのは秋一だけどね」
ぼそりと呟くと股間を思い切り蹴られた。
おわり
20121224
よいクリスマスをお過ごしください。
ご自由にお持ち帰りください。