図書室の主 | ナノ

頑張れ鈴原くん!

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 鈴原は、生徒会執行部のメンバーとなってからの思い出を振り返っていた。
 殆どが緒方と樋山の甘ったるい日常。――甘過ぎて気持ち悪くなってきた。
 そう、関係のない人々にまで甘さを振りまいていたふたりだ。
 仲違いなんてするはずがない。
 ましてや――リコールなんて。
 生徒会執行部監査、委員長代表樋山恭介の名で現生徒会執行部のリコールが提出されたのは昨日のことだ。
 2週間後、臨時生徒総会が開かれる。
 そこで、緒方は樋山に裁かれる。
 そんなのは。
 だめ、だ。
「なんで、ですか」
 生徒たちで賑わう図書室の中でも、委員たちの休息所である小部屋は静かだ。
 放課後、議長団たちが図書室に集まると柚葉から聞いた鈴原は図書室へと駆けた。
 しかしそこにいたのは樋山ひとり。
 訊きたいことはたくさんあるのに、上手く言葉にならない。
 樋山はさすがに固い表情だ。
「緒方先輩のことが好きなんじゃないんですか」
「好きだよ」
 生徒会室で通常通りの仕事をしているメンバーの姿が思い浮かび、鈴原は胃が痛くなってきた。
「でも、それとこれとは別」
「振られたからですか!?」
 樋山は一瞬、驚いたように目を丸くした。
 ああ、そうなのかと鈴原は足元が崩れ落ちるような感覚を覚える。
「まだわからないんですか? 緒方先輩は樋山先輩を守るために突き放したんです!」
「違うね、鈴原くん」
「……何がです」
「俺は今、試されてんの」
 ――一生、真司を愛し抜くことができるかをね。
 穏やかに笑った樋山には何を言っても無駄だと思った。



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