頑張れ鈴原くん!
何も、知らなかった。
知ってて、鈴原が頑張っているのを横目に嗤っていたのか。
高2は意図的に鈴原を排除していると感じた。
こうなると、頼みは樋山の幼馴染でもあるクラスメイトしかいない。
「俺、もう限界。樋山先輩、化け物でしょ」
「恭介ぇ?」
嫌そうに眉間に皺を寄せ、手元の本に目を落とした岸本柚葉に構わず鈴原は詰め寄る。
「あんなの化け物のうちに入らないよ」
つまらなさそうな声。
中1のときからの付き合い、柚葉とはそれなりに仲が良いと思っていたのに。
「俺からはそれだけ」
柚葉はそっけない。
「でも、あの仕事量は」
「恭介なら、やるよ」
「……なんで」
「好きな人間には甘いんだよ。昔っから」
面倒臭そうに柚葉は言う。
鈴原は考える。来年、自分があの量をこなせるかどうか。
――無理だ。
*****
生徒会執行部メンバーと代表ふたりの計9名でゴールデンウィークをどこかに出かけよう、と思い立ったのは鈴原だ。
「緒方先輩はどこに行きたいですか?」
「うーん……。樋山の予定を聞いてからな」
……本当に仲が良いですねっ!?
鈴原は悩んだ。
この生徒会長には意思というものがないのか、と。
昼休みに、「考えておいてくださいね」と言い置いて、放課後。
生徒会室の扉に手を掛けようとした鈴原は、一瞬立ち止まる。
中から漏れ聞こえた笑い声は名賀と樋山、珍しい取り合わせだ。
「なんで呼び方変えたんだよ」
名賀の砕けた声だ。