図書室の主 | ナノ

頑張れ鈴原くん!

しおり一覧

 鈴原が初めて自分だけで仕上げた提案書。
 生徒会執行部の監査係も兼ねるクラブ長代表と委員長代表に提出をした鈴原は緊張しすぎて頭の中が真っ白だった。
 普段、甘ったるさをまき散らしている樋山の真剣な表情を見るのは初めてで、それに 怯える自身に苛立ってしまう。
 クラブ長代表と委員長代表両方の同意が必要なため、この提案書はもう無理だろう。
 委員長代表の樋山は図書委員長の名にふさわしく、両脇にいくつかの本を積み上げておりそれも鈴原に諦めの感情を増幅させた。
 通常、美化委員だけが毎日ゴミを回収する。そして、風紀委員は風紀検査時以外の活動がない。
 ならば分担すればいいじゃないか、というのが鈴原の案だ。
 しかし今までのんびりだらだらと過ごしてきた風紀委員たちの反発は必至だろう。
 事前に目を通した緒方には駄目だしをされた。根回しが面倒臭い、彼は一言そうのたまった。
「……だめ、ですか」
「いや。いいと思うよ」
 あっさりと頷く樋山に拍子抜けした。坂井もまた、頷く。
「これを足しておいてね」
 坂井の差し出した紙を受け取り、鈴原は「どうして」と紡ぐ。声は掠れていたが樋山には聞こえていたらしい。
「緒方は情で動かない。俺は情で動く。それだけだよ」
 意味はよくわからなかったが、にこりと微笑んだその姿は天使の名にふさわしい。
「根回し、頑張ろうね」
 ところが、その2日後。風紀委員長と美化委員長が生徒会室を訪れた。
「高校総務の鈴原くんはいらっしゃるかい?」
 両耳にピアス穴、ネクタイはだらしなく緩められている、明らかに風紀違反をしている風紀委員長に呼び出されたときには鈴原は涙目だ。
 美化委員長は面倒臭い、と顔に書いてある。これが高2なら、高1以下は苦労するだろう。
「はい」
「俺たちに話があるだろう?」
 奥の席で書類の推敲をしていた緒方がちらりと顔を上げた。
「お前、その言い方脅しっぽい」
「緒方に言われたくない。――ってあれ? 恭介は?」
「知らん」
「うっ」



*前次#
backMainTop
しおりを挟む
[4/10]

- ナノ -