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議事進行は滞りなく進み、すべて承認され、質疑応答も潜り抜けることができた。
議長団の退場を横目に、今日の放課後は真司と反省会、学園祭準備まで間が空くと恭介はぼんやり考えていた。
***
執行部としての反省会は明後日行われるそうで、彼とふたりきりになるのはあのとき以来、緊張しないと言ったら嘘になる。
彼はこちらに背を向けたままで、終礼が多少長引いて時間に遅れてしまった恭介は内心冷や汗を掻いた。
「今日はお疲れ様」
素っ気なく放たれた言葉にますます首が縮こまる。
「あ……。遅れてごめんなさい」
彼が振り返って恭介を一瞥する。静かに見えるその瞳が実はものすごく怒りを湛えているのに気づいて逃げ出したくなる。
「やっぱり和輝が言った通りだった。お前、最低だな」
聞きたくなかった名前に反射的に目を瞑る。
すぐ傍に彼の気配を感じたと思ったら、体が宙に浮いた。地面に叩きつけられ呼吸が苦しくなる。
「なあ、恭介、わかるか? 俺とお前だけの場所だったんだぞ?」
そんなの身勝手すぎる。抗議の言葉は、恭介に馬乗りになった彼の唇の中へ消えた。
久々のキスに、歓喜と屈辱で目が眩む。
躊躇なく彼の股間を蹴りあげた。
「馬鹿にするなよ」
呆然とする彼を見下ろし、終礼中にまとめたレポートを鞄から出して彼の目の前に突き出す。
反射的に受け取った彼はもう普通どおりで、生徒会長の顔になっていた。
お互い本心を隠したまま、反省会が行われ、彼を見ることもなく恭介は生徒会室を後にする。
だから、恭介は知らない。
彼が、寂しそうな表情をしていたことに。
おわり