図書室の主 | ナノ

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「美化委員と風紀委員を統合ってのは、真司の案?」

「そう。どっちも働いてないんだから、わざわざ分ける必要もないと思ってね。保健と体育をまとめるなら、こっちもやっていいんじゃないか?」

「んー……。体育祭準備とクラスマッチのときに支障が出ると思う。美化と風紀は学園祭で」

「それは実行委員に一任する」

「なるほどね」


 個人的には「学食をつくる」に心を惹かれるが、生徒の力ではなく学園全体を巻き込むことになるので却下。
 この地域で学食を持っていない高校は夏扇と、ライバル校である冬炉だけだと知ったのは実は最近だ。

「健全な精神は健全な家庭から」がモットーなので幼稚園以来ずっと弁当、ちなみにどちらの学園も寮を持っていない。


「真司、俺はやっぱり残す派だな。議案に混ぜ込むのは構わないけど。次の級副長会でこれをふたつにして、議長団と提案者を決めるんだよね」

「そう。二時間で議案と、部活動費の承認と委員会の活動報告を詰め込むんだから仕方ないだろう」

 もう一度議案を眺めた。次に、疲れ切った真司の顔を盗み見る。


「いざとなったら執行部でごり押しできるのはどれ?」

「全部。ただ、当然、生徒総会で承認を得たものの方が通りやすくはなる」

「提出先ってどこ?」

「生徒指導部。名賀暁が根回し中」


 中三から二年間クラスメイトだった男の顔を思い浮かべると吐き気がした。

 そんな恭介の様子にも気づかず、真司は淡々と続ける。


「ところで、お前は活動報告をまとめたのか。委員長だろう」

「ん。あとは図書委員会を開いて納得させるだけ。ブーイング出るだろうけどね、俺としては悲願だから」


 曖昧に笑って、彼の瞳をすり抜けた。今日はもう、これで終わり。


「真司、名賀のこと、好き?」


 ずっと訊きたかったのに、訊けなかったこと。副会長の名前を唇に乗せたら背筋が冷えていった。

 彼を見ないようにしたのに、彼が頷く気配がして、泣きたくなる。


「じゃ、お疲れ様。次の級副長会で会いましょう」


 丁寧に締めた生徒会室の扉の奥、ガラス越しに目が合った彼は無表情で、恭介は無理やり微笑んでから帰宅した。

***

 毎年六月に行われる定例生徒総会は、五回目の今年になるまで特に意識したことがなかった。


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