図書室の主 | ナノ

紙を捲る音

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 我ながら諦めが悪いと思いつつも、気づけば彼を目で追っている自分がいる。

 真司が信任率98パーセントで生徒会長になってから三ヶ月。真司に振られてから、三ヶ月。

 高二になり、彼とクラスが分かれ、恭介は図書委員長になっていた。

***

 休み時間、中学校舎から高校校舎を眺めるのが日課になってしまった。

 進路別にクラス分けされ、弁護士志望の彼は文系、高校校舎。恭介はとりあえず潰しがきく理系を選択して中学校舎にいる。

 委員長とか級長とかそんなものに興味はなかった。けれど、彼に正当に会う理由がほしくて気が付いたら委員長に立候補していた。生徒会執行部管轄の委員会だったら、召集がかかったときに堂々と彼に会える。

 更に委員長代表になったので、生徒総会や学園祭などの行事前は人目を憚らず生徒会室を訪ねることもできる。


「恭介、それ、なんていうか知ってる?」

「ストーカー」

「わかってるならやめろ」


 窓際の亮介の席を占領しているせいか、最近亮介の機嫌が悪い。

 今日の放課後は、先日の級副長会で出た生徒総会の議案を生徒会室で吟味することになっている。

 図書室へ行っても、挨拶ひとつない。貸出手続きのときも終始無言。

 生徒会室では、他の生徒の手前和やかに会話することができる。嬉しい半面、未練がくすぶるのを恭介は感じている。

 休み時間終了のチャイムが鳴る。

 一瞬、窓越しに彼と目が合い、逸らされる。

 胸の奥が訴える痛みに慣れることはない。

***

 生徒総会の議案は各クラスからふたつ提出される。



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