本編
「『嫌い』と言われたぐらいで諦められるような男は嫌いだ」
「それ、は」
嫌いぐらいで、じゃないよ緒方。
俺は、傷ついたのに。
「俺も、傷ついた」
なのに樋山の心中を読みとったかのように、緒方が呟くと怒りも悲しみも薄れていく。我ながら単純だ。
「リミットまで、あと一週間強――十日、だな樋山」
「うん」
明日から7月。カレンダーの終業式につけた印を消そうかどうか昨日、すごく悩んだから間違いない。
彼は、つまらなさそうだ。
「もったいないこと、したな」
「うん」
「まだ、俺が好きか?」
「緒方、好き」
「まだ、振り向かせてみたいか?」
「もちろん」
チャイムが、鳴る。
「待ってる」
どこで、なんて訊かなくてもわかる。
嬉しくて叫びだしたくて、でも彼に塞がれたから叫べなくて、綺麗に笑った彼の頭をかき混ぜながら力一杯抱きしめた。
おわり。