図書委員の日常
もしかして、監視していると思われた?
逃げ出さないように。誰かに助けを求めないように。
「――緒方っ!」
どんっと床に拳を叩きつける。
カーペットが敷いてあっても痛いものは痛い。
それでも構わなかった。
彼が受けた痛みに比べればきっとこんなのは痛くない。
人の体を蹴りあげるとしたら、叩くとしたら、人には見えない場所。大人に気づかれない場所。
だからといって、ずっと一緒にいた樋山が気づかないというのはあんまりで。
もし樋山がぐるだと言われても、彼は納得しただろう。
知ってて見ないふりして監視しているのだと仮定すれば、樋山が緒方の様子に言及しなくても不思議ではない。
これから、どうする。
教師に助けを求めるのは論外だ。助長する。
ずっと、緒方の傍にいたい。
――傍に。
何かが頭の中で閃いた。
一か八かだ。
樋山は緒方が好きなのだ。
なんの問題もない。
「ごめん、みんな」
口に出して幼馴染へそっと謝罪を呟く。
人をいじめることが宴となる最悪の世界へ、飛び込んでいこうではないか。
口端が上がる。2日ぶりに楽しい気分だ。
決意が揺らぐ前に帰宅した。
家に帰ったら幼馴染たちからのメールがすごいことになっているだろうと覚悟していたけれどなにもなくてほっとするような寂しいような。
眠りに落ちる直前思い描いた彼の表情はなんとも寂しそうで、胸が締め付けられたまま眠った。
おわり