図書委員の日常
「恭介!」
「だめだよ瑞樹、もっとわかりやすく言わなきゃ。――恭介、上で話すから。ここじゃまずいんだ」
「なんで」
瑞樹の腕を振りほどこうとして睨みあい、このままではどうしようもないと思ったのか亮介が口を挟むがそれも樋山にとっては納得できるものではなかった。当然反論すれば、寛樹が吐き捨てる。
「想像はついてるんだろう?」
苛立ちを隠そうとしない寛樹の様子が珍しく、呆気にとられていると瑞樹に抱え上げられた。
「ちょ、降ろせよ!」
「上行くよ」
「無視するな!」
「ここで落とそうか?」
「結構ですごめんなさい」
寛樹と亮介はさっさと図書室を出て、抵抗するにできない樋山は瑞樹が止まるまでおとなしくしていた。
つれていかれた先は中庭。日差しが眩しく暑いがそのせいか誰もいない。
木陰に4人で身を寄せて無言のひとときが過ぎていく。
「俺、気をつけろって言ったよね」
責めるわけではなく事実として淡々と亮介は告げる。その物言いにかちんときて深呼吸。なんとか笑顔を繕う。
「うん。言った。でもあの噂だってなんともなかったし大丈夫だって」
「大丈夫じゃないから瑞樹が必死で探したっていうの、わからない?」
「探してくれなんて言ってない」
「恭介。緒方のこと、好きでもいいから自分の身を守ることを考えて」
意味がわからない。わかりたくない。縋るように他のふたりを見れば黙って頷かれた。
太陽の匂いを含んだ風が頬を撫でていく。
自分が涙を零していることにも気づかないまま、樋山は空を見上げた。
おわり