番外編
ずっと虚空を睨んでいる。どうやら数字で遊んでいるらしい。その空間にどうにか入れないものかと考えて岸本は苦笑する。
彼から数字を取り上げることなんてできない。
*******
「緒方あああああ! 好きだあああああ!」
休み時間のたびに、あいつから放たれる自分へのメッセージ。緒方とて嬉しくないわけではない。恥ずかしいわけでもない。恥ずかしいのはあいつひとりだ。
ただし、騒音被害はいただけない。クラスメイトの名賀と草場は笑って許してくれるが申し訳なく思っている。
「俺だって文理離れてたら樋山と同じことしてる」
苦笑しつつ草場に目をやる彼とそっぽを向く草場。自分たちの関係が重なって見えて、昼休みが待てない、なんて。
「ちょっとしめてくる」
そんなわけあるか。
うるさい。
本当にうるさい。
「あー……、ほどほどにね」
名賀の顔が引きつって見えたが気のせいだ。
読書になると周りが見えなくなるという自慢の集中力を崩す、樋山の声。
決して、惚れてるから、なんてことはない。
あいつの声がうるさすぎるんだ。
黙らせよう、ついでに告白もやめさせよう。
だからあいつの浮気はちょうどよかったのに時間切れ。運のいい奴め。
ガムテープか、なんて物騒なことを考えながら緒方は樋山をどうやって黙らせるか考えていた。
おわり。