F
「ちゃんと捨てておけ」
「ん」
「じゃ、俺も風呂入ってくる」
「亮介服貸して」
「んー。そこ」
まだ洗濯した服が残っていたらしい。
洗濯機を覗くと思ったより少ないので疑問に思っていたら着替えてないと言われた。なるほど。
唯一綺麗なままだった寝室の入り口で恭介は固まった。
小さなベッドに3人で雑魚寝する姿を想像して身震いした。これは朝、絶対に誰かが床に寝ているパターンだ。そしてそれが3人の中で一番小さい恭介であることは疑いようもない。
「ははは……。まじかよ……」
乾いた笑いを浮かべていたら頭を拭いていた亮介に不思議そうに見られた。元はといえばお前のせいだ。
ベッドに飛び乗るとスプリングが嫌な音を立てた。これは3人で寝て大丈夫なのだろうか。
「恭介」
「なあに」
「恋しなよ」
どこか吹っ切れたような顔をしている亮介の真っ直ぐな瞳がつらくて目を逸らした。
ぎしりとスプリングが鳴って、亮介の顔が近い。
「俺さ、ヒロのことを思うとつらい。ヒロとどこか似てる恭介を見るのも苦しい、けど……幸せなんだ」
息が詰まった。すべて話したい気持ちになって、喉を押さえたらキスが降ってきた。
寝室の入り口に瑞樹の影が差す。3人とも動かない。
音はしない。ただ空気が流れる感触がするだけ。
「恭。恋、してるんでしょう」
してるよ。今でも、真司が欲しいよ。でもそれを言ってどうなる。
「眠い。寝る」
タオルケットをひとり占めして、目を閉じた。
瑞樹と亮介の気配。心地よい体温。本当に欲しいものはそれじゃない。
ここに寛樹がいれば完璧なのに。明日顔を合わせるであろう同僚兼幼馴染の食えない笑みが脳裏に弾けて消えた。
*******
昨夜のことを思い返し真司は頭を抱えた。