ハッピーエンドは認めない
「手を、繋ぎたい」
秋一が思い詰めたような顔をしているので、覚悟を決めて訊ねたら、返ってきたのはかわいい要求。
「俺も、そう思ってたところ」
秋一の指に瑞樹の指を絡めると、秋一が泣きそうな目でそれを見ていた。真昼間、繁華街で人も多い。いつ、誰に見られるかわからないのに。
男性の平均身長ぐらいであろうふたり。いくら瑞樹の線が細いからといって、人の目は誤魔化せない。
「大丈夫だよ秋一。俺たちは恋人なんだから」
繋いだ手を目の高さに合わせ、瑞樹はにっこり笑って秋一の手の甲へと口づけた。
「秋一、愛してるよ」
吐いても吐いても空気の抜けない肺を押さえながら、秋一はこくり、と頷いた。
<手を繋ぐ>おわり。