図書室の主 | ナノ

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「緒方、好きなんだ」


 彼と樋山の認識が食い違うことを知った翌日、正座して緒方に告げた。

 緒方はよくわからない、といった様子で。

 仕方がないと樋山も思う。世間からホモが多いという目で見られるから、生徒たちはそう見られないように涙ぐましい努力をしている。

 一度ホモっぽいと見られたら最後、ひどいいじめを受け、そうであるにしろないにしろ心を病み学校を去る、残酷な自浄作用。

 そんなこともあって、他の学校よりも同性愛者は少ないんじゃないかと思う。

 そして、外部生たちもそれを肌で感じているはずだ。

 なのに突然、友人だと思っていた人間からそれを告げられたら、恐怖にしかならないだろう。

 それでも、樋山は言わずにいられない。恋って盲目、と樋山は自らを嘲笑う。


「緒方、好きなんだ。恋って、わかる?」


 彼はゆっくり頷いた。その表情に嫌悪は見当たらなくて、とりあえずほっとした。


「お返事、くれる?」


 逸る気持ちを抑え訊くと、彼は額に手を当てて静かに口を開いた。


「現状を確認させてほしい」
「うん」
「そのいち。樋山は俺のことが好きだ」
「……うん」


 あっさり言われ、こちらが戸惑ってしまうが緒方は淡々と言う。


「そのに。俺は樋山のことを友人だと思っている」
「そう、だね」
「そのさん。俺は男にせよ女にせよ、今恋する気にはなっていない。だってまだ中2だ。早すぎると思う」
「つまり?」


 断られる、と覚悟を決め、目を閉じた。でも、想いは告げた。悔いはない。


「俺を落としてみろ」
「……は?」


 間抜けな声が漏れ、うっかり目を開けてしまった。


「お前に惚れさせてみろ、と言ってるんだ」


 対する緒方は真顔で。


「あの、俺、男だよ?」
「何を今更」
「いいの?」


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