図書室の主 | ナノ

2012七夕

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 亮介だって逃げ出したいくらいだ。

「亮はどうする? 俺と会えなくなったら」

 寛樹の目の奥が笑っていないことに気づいたとき、ひゅうと自分の喉が鳴るのを感じた。

 恭介たちに同情している場合ではなかった。寛樹の無言の圧力に押されじりじりと後ずされば既に後ろは壁。逃げ場はない。

「俺は、ヒロについていく」
「不十分」

 ぐっと腕を掴まれ引き寄せられ間近にある寛樹の浮かべる笑みは黒い。

「亮介は俺のものだから選択権はないの。捨てるときにはおとなしく捨てられてよ面倒臭い」

 冷たい言葉には慣れているけれど、傷つかないわけじゃない。離れていく彼に追い縋ろうとしたら蹴られた。

「俺は、ヒロについていくから」
「しつこい」

 惚れた弱みが存在するというのなら、手放せなくなるのは寛樹のほうだと信じたい。

******

「返事は?」
「緒方、好きー!」

 距離を開けられていたけれど、一歩で詰めて彼に飛びつく。

「樋山」
「緒方、好き!」

 それがすべてだと、樋山は緒方を抱き込み何度も愛を叫んだ。
 拒絶がなかったので、素直に思ったままを言おうと思う。

「緒方」

 声のトーンを落とし、彼の耳元へ唇を寄せる。

「年に1回しか会えなくてもね、ずっと緒方のことを考えているよ。そして、必ず会いに行くよ。愛してる」

 ふわりと彼が微笑んだのがわかった。

おわり。

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