2012七夕
緒方/樋山/瑞樹/秋一/暁/悠太/亮介/寛樹→中3
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その日、図書室を訪れると緒方が真面目な顔をして正座していた。
つられて樋山も彼の目の前で正座をするが彼はなかなか口を開かない。
何かしただろうかと心の中で冷や汗を掻きつつも表面上は至って平静に、樋山は待った。
「もう、樋山と会わないことにした」
「ふーん……はァ!?」
同じ校内にいるしそもそもクラスも一緒だしそれは無理、とかなんでいきなり、とか突っ込むところはたくさんあるのに彼の言葉が衝撃的すぎて樋山は口をぱくぱくさせたものの音が出てこない、というか何を言えばいいかわからない。
「いきなりなにを……」
「俺、前から考えていたんだ。いくら俺の集中力が強靭とはいえ樋山に抱きつかれながら読書を続けるのはかなりつらい。それにお前は果たすべき役割を果たしていない」
「や、役割って?」
「学業だ!」
「……なんでいきなり」
「問答無用。そういうわけで年に1回会おう」
無体な扱いをされたことよりも年に1回だとしても彼から会おうと言われたことに感動していると図書室を追い出された。
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「っていう夢を見たんだよー。もう俺と会わないなんて言わないでねー」
幼馴染の恭介の話を聞きながら、瑞樹はいつ逃げ出そうかと考えているところで話が終わった。
教室であるにも関わらず恭介は朝から緒方にすりすりと頬ずりしていて、緒方はそれに構わず読書に励んでいた――せめて迷惑がられるほうが反応があっていいんじゃないか、恭介。
いろいろと目に毒な光景を見ないために、教室の隅を飾る笹に触れる。
「七夕か……」
お互い惹かれあい、結ばれてから本分を投げ出した織姫と彦星。天帝に引き裂かれ年に1回だけの逢瀬を許される。
ぱたん、と軽い音がしてああ緒方が本を閉じたのかと思うと同時に幼馴染が床に転がる。
「暑苦しい」
教室の温度が一気に下がりそうな声音と視線で振り向かれたというのに緒方に構ってもらえる! と恭介は興奮状態で、とりあえず幼馴染としてこれだけは言っておかなくてはならないだろう。
「恭介、気持ち悪い」
ぷっと悠太が吹き出したのが聞こえた。しかしこちらとしては笑い事ではないのだ。