Memo | ナノ


02/18(Tue):VocalSoul

 先輩方が、好きで好きで仕方がなくて。
 でも、ホモなんて気持ち悪いだけだから。
 それを許してくれそうな生贄だけを、表面上、愛した。
 生贄の顔を見ながら僕は、先輩方のことをいつも、思い浮かべていた。

*****

 好きだってバレちゃいけない。
 いや、同性が、男が好きってバレてもいいけど。
『先輩方のことが』好きだってバレちゃいけないから。
 生贄のきみに囁く。
 半ば、見せ付けるように。
「ショウちゃん、愛してるよ」
 それを裏返すと、『先輩方のこと』は、愛していないということ。
 尊敬してます。
 大好きです。
 それ以上は、許されない。
 赦され、ない。
 愛したかった。
 でも、できなかった。
 もう、目の前で、壊れていくのを、見たくない。
 本当は、先輩方ですら、愛していたわけではなかった。
 好き、だったけど。
 所詮、あの子の代替。
 だけど、行き場を失った僕の愛は、誰か、注ぐ相手を求めていた。
 先輩が好きなんじゃない。
 先輩方が、好きだった。
 ひとりに向けたら、壊れることは、わかっていた。
 だから、みんなに、あげる。
 僕を愛さなくていいから。
 愛させてください。
 ひとりは嫌だ。
 退屈なのも、嫌だ。
 夢中になっても、いいですか。

*****

 好きだってバレちゃおしまい。
 だったら。
 嫌いなふりするしかないじゃないか。
 発言に眉を顰め、声を掛けられたら顔を背け。
 素直でいることは、罪だった。
 感情が、そのまま溢れてしまったら。
 好きだという想いが、際限なく、僕の心を食い荒らす。
 だから僕は、歯を食いしばる。
 力を込めて、嫌いだと、言う。
 嘘ではありません、先輩方。
 僕の想いを封じるあなた方が、
 ――大嫌いです。


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