Memo | ナノ


12/17(Tue):2012.10.

10/22(Mon):お知らせ

本日から3月20日まで一切のネット活動を停止します。
それでは、お元気で。





10/22(Mon):ちょっと休憩

名賀くんと真朝ちゃん
「あっ、こっち見た!ああああ、向こう向いちゃったよ。かわいいなあ、朝陽は……」
「我が弟ながら気持ち悪い」

ベビーベッドの姪に夢中。




10/22(Mon):ハロウィン

ハロウィンが近いので
真司さんと恭介さん
「恭介は俺にコスプレしてほしいのか?」
「待って真司に女装は似合わないむしろ俺がやるいややりたいわけじゃなくてつまり真司にコスプレしてほしいとは思わないよ!」

毎度お馴染み、昼休みの図書室。
男前な彼の女装なんて考えただけで無理だと思い、慌てて彼を止めた。

彼は「コスプレイコール女装なのか」と呟くと妙に納得したようにひとり頷き、「じゃあ、楽しみにしている」……ってえええええ!

期待のこもった視線がまったく嬉しくない、そんなとある日の午後。




10/22(Mon):葵くんの愚痴

葵くん、学校が面白くないようです。
「小学校のときより先生が冷たい」
「あ、それわかる!」

なにやら意気投合する息子と親友。真司に言わせれば中学も十分に過保護だ。

-------

「お父さんが、ホモだって言われた」

ビービー泣きながら言う葵の頭をあいつが撫でてやるのを見ていた。

「友達なだけだから、心配しなくていいよ」

苦笑しながら告げるのを、見ていた。

-------

「後添いを迎えてください。これ、伯母さまから預かったお見合い写真」

聞きたくなくてその唇を塞いだ。

「お前は、俺に抱かれるのがそんなに嫌か」
「そういう問題じゃないよ。わかってるでしょう」

泣いてる顔を見たくないのに。

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「お父さんと恭ちゃんってどんな関係なの?」

興味津々の茜、まったく茜ちゃんはおませさんだなあ、じゃなくて。

「えーっと」

困った顔した真司がこちらを見る。

「茜ちゃんのお母さんの従兄で、お父さんの親友だよ」
「それは建前でしょう?」

誰だよこんな子に育てたのは! あ、俺でした。




10/22(Mon):習い事

拍手ありがとうございます。

真司さん子育て奮闘記
久々にあいつが実家に帰ったので、たまには父親らしいことをしようと思ったはいいとして。

「あれ、やってみたい」

茜が指差したのはテレビ。バイオリンを大きくしたようなものを弾いている女性。もちろん、チェロの存在もヴィオラの存在も知っているが見分けがつかなくて。

「うーん……」

曖昧に笑って誤魔化し、夕方帰ってきたあいつへ中々切り出せずにいる。

「真司、どうしたの?」

葵たちを寝かしつけた後、悩む真司に向き直ったあいつは少し怯えていて、だけどそれに構う神経も失せて。

「昼間、茜がチェロかヴィオラかをやりたいって言ったんだがどうすればいいか迷ってる」
「金銭面?」
「もあるけど、送り迎えとか先生とか」

ふうん、と気のない返事をしたあいつは皿洗いを始めてしまう。

しかしそれもすぐに終わってしまって、振り返ったあいつは困ったように笑っていた。

「送り迎えは俺がやる、けど」

言い淀んだあいつが目尻を拭い、信じられないことを言う。

「俺、ヴィオラならみることできるよ。チェロは、すみれちゃんのをまだ伯母さまがとってるはず……。すみれちゃんの家は防音部屋もあるよ。よくアンサンブルやってたし」
「お前、いったいどんな家庭に育ったんだ」
「んー」

誤魔化すような苦笑い。育ちが違うと言われているようで腹が立つ。

この前、葵が英語とドイツ語をやりたいと言ったときもあっさり教材見繕って教えはじめるし。

「ただ、茜ちゃんを風花、葵くんと薫くんを夏扇に行かせるならやっておいて損はないよ」

視線を断ち切るように見せられた背、その首筋に噛み付いた。




10/21(Sun):ケータイ

真司くんと恭介くん。
中3くらいか大学生かどちらでもいい。
彼はとことん無駄を嫌う。
一日にメールを確認するのは2回。それもパソコン。
ケータイのアドレスを知っているのは家族と恭介だけ。
無駄な話というのが嫌いで、だから外から入ってくる情報は一元管理できるパソコンに集約したのだとか。
だからその日、すぐに返事が来て驚いたのだ。




10/21(Sun):使途不明金

同居中に使途不明金があったら。
真司に使途不明金があった場合

おかしい。恭介は首を傾げる。銀行の残高が家計簿に記載された分と異なる。
真司が恭介に内緒で使いこむとは思い難い。しかし恭介自身も使っていない。
家計簿への記載忘れということだろうか。
帰ってきたら訊いてみよう。


恭介の場合
おかしい。真司は首を傾げる。銀行の残高が家計簿に記載された分と異なる。
恭介が真司に内緒で使いこむとは思い難いが、人間魔が差すこともある。帰ったらとっちめるか。

秋一の場合
外出先でたまたま記帳をした瑞樹は残高の少なさに目眩がした。
おかしい。しかも引き出されたのは今日。
急いで家に帰れば焦げくささと甘ったるさが瑞樹を襲う。
「あ、お帰り。遅かったな」
「……秋一。上機嫌なところを悪いけど、これはどういうこと?」
通帳を目前に突きつけ迫ると秋一は曖昧に笑った。
「笑って誤魔化すなー!」

瑞樹の場合
金銭感覚がないことを言い訳にして普段、瑞樹に金の管理を頼んでいたことを後悔した。
たまたま記帳しにいったら残高は殆どなくて。
帰ってきても瑞樹にも何も言えなくて。
もしかして、浮気相手に貢いでいるとか。誰かに脅されている、とか。
「ないな」
自分で否定しとりあえず瑞樹の背中を蹴りあげた。




10/21(Sun):知人

秋一さんと瑞樹さん
勝手に先に行くし勝手にいなくなるし、ふざけるなと言いたいけれど、時折振り返るその瞳が不安げに揺れるから許してしまうのだ。

「……君、本当に俺のこと好きだよねえ」

途端に先に行ってしまう君なので。

「ほら、拗ねないで」

追いかけるのは俺の特権でしょ?




10/20(Sat):話の流れを考えてみる

改訂のネタばれというかあらすじというかなので変わるかもしれませんが苦手な方がスルーしてください。






図書室の主
一年:さらっと
二年:どろどろ+学園祭+修学旅行
三年:真司が受け入れられ始めて恭介嫉妬
一年:修学旅行+生徒会執行部役員立候補+当選+ふられる
二年:生徒会長と委員長代表の攻防
三年:受験+プロポーズ

知人と言い張る君
-Part1-
瑞樹と秋一の一週間
-Part2-
秋一失踪+柚葉との諍い+家庭の事情

Vocal Soul
先輩組+後輩組+クラスメイト+ヒサ




10/20(Sat):旅の終わり

葵くんと恭介さん。
題名はもう決めているのです。
“旅の終わり”
でも、図書室と知人と旅の改訂が終わるまでじっと我慢。。。

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母の従兄だというその人は父の親友でもあり、葵たち三兄妹にしてみれば母親代わりだった。
休日には母の実家(つまりその人にとっては伯母夫婦の家)に連れて行ってくれたおかげで母亡きあとも母方の祖父母と疎遠にならずに済んだ。

「葵くん」

穏やかに自分を呼ぶその声が好きだった。

10/20(Sat):日常

知人と言い張る君の改訂は*で行っています。
他の改訂も移していく予定。
こちらのサイトも残します。
大筋が決まっているけれどなかなかうまくいかない矛盾。
どれも書き出しは気にいってるのに、途中からごちゃごちゃする…。




10/20(Sat):セリフ

断片的な場面
秋一の家の前で足が竦んだ。
「あの子は長男でひとりっこで跡取りなんです。諦めてください」
頭を下げた秋一の母親の気持ちは瑞樹にもわかる。
瑞樹の母親は、瑞樹が秋一を愛していることを知らないのだ。


「まともな同性に惚れても、ろくでもない異性に惚れても面倒なことには変わりがない」
自嘲気味に呟いた真司を抱きしめることができない。
そんね恭介を馬鹿にしたように真司は笑う。
「だから、お前が好きなんだ」

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「俺たちは緒方の花嫁姿を想像しこそすれ、こんな結末は望んでいなかった」(「旅の途中」より)
名賀の台詞。一番のお気に入りかもしれない。
姉以外に興味を持たなかった名賀はやっぱり感情が薄いまま、でも姪の朝陽-アサヒ-にめろめろっていう脳内設定。




10/20(Sat):望遠鏡

真司くんと恭介くん
大変だ。大変なことになった。鈴原香丞は生徒会室へと走る。

「大変です! 現生徒会執行部へリコール要求署名運動が!」
「おーちつけってスズちゃん」

倉木ののんびりとした声に目眩がした。

「これのどこが落ち着けと!」
「いや、だからさあ……」
「倉木の言うとおりだ。落ちつけ鈴原。俺だって一般の生徒だったらリコールしたかもしれん」

 言い淀む倉木とどうでもよさそうな緒方、最初から無関心な名賀。普段頼れる先輩たちは自分たちのことに無頓着すぎる。

「だって、提案者は樋山先輩なんですよっ?」

 さあこれでのんびりしてはいられないだろうと先輩たちを睨みつけるも相変わらずで。

「大丈夫だよ、鈴原」

 書類とにらめっこしたままの緒方がやっと顔を上げてくれた。

「あいつは委員長代表。しかも俺の元恋人。リコール請求を拒んだらその時点であいつが疑われるのはわかるだろうが」
「つまり緒方先輩を売ったってことじゃないですか!」
「いや、違うね」

 倉木が鋭く突っ込んだ。

「君は恭介と一緒にいたことがないからうろたえるのさ」






10/20(Sat):CS

ミヤとショウちゃん
幼い頃から人気者で、あぶれたことがなかった。

これは、その罰なのかもしれない。




10/19(Fri):生徒会メンバー

真司の代の生徒会メンバーとヒサの代の生徒会メンバー
生徒会長:2-3緒方真司
高校
 副会長:2-3名賀暁
 総務 :2-6倉木良
 総務 :1-5鈴原香丞
中学
 副会長:3-A御厨陸
 総務 :3-C志藤浩太
 総務 :3-C東 博隆
委員長代表:2-6樋山恭介
クラブ長代表:2-6坂井翔

生徒会長:2-3市村健
高校
 副会長:2-3伊豆龍輝
 総務 :2-3瀬高春
 総務 :2-6垣内遼
中学
 副会長:3-A松口久哉
 総務 :3-A野田衛
 総務 :3-A富阪章吾
委員長代表:2-3俵田幸一
クラブ長代表:2-3篠村幹孝




10/19(Fri):小話

拍手ありがとうございます。風邪は秋一さんでした。
追記は眠たい恭介さん。
ここで眠ったら駄目だとわかっているのに。

閉じそうな瞼を必死に持ち上げ、愛しい彼を見る。

「恭介」

なあに。
返事をしたいのに唇が動かない。

「……恭介」

くすりと笑った気配、掻き上げられる髪。

「おやすみ、恭介」






10/18(Thu):知人

風邪というかなんというか。
瑞樹が体温計片手に秋一へ迫る。


「熱測りなさい」
「嫌だ」
「我儘言わないの」
「だって、測って熱があったら最悪じゃないか」

ぴっ。

沈黙の10秒。

ぴぴぴぴぴ。

「……」
「ほら、秋一、何度?」
「……」
「こら、言いなさい」

ぴっ。

沈黙の10秒。

ぴぴぴぴぴ。

ぴっ。

「……何度測っても一緒だよ。ねえ、何度だったの」

ぴぴぴぴぴ。

「瑞樹、それ、壊れてるぞ」
「え?」
「だって何度測っても39度しか出ない」

 布団に強制連行です。




10/18(Thu):おしらせ

Memoにてお知らせ。
地味に移転中→
メインの活動はこのままのサイトでします。
絶対に改訂しないものだけ移転先に移しています。
一方通行です。全部の改訂が終わったら双方向行き来できるようにして、メインの活動も移転先にします。
こちらを消すことはないのでご安心ください。
現在置いているのは「知人と言い張る君(改訂中)」、「透明の箱」、「Natural Wind」、「Innocent Zero」です。
カテなしランクに登録するか悩み中。(「僕、君の何」さまにお世話になろうかと。。。)
でも、しばらくまともな更新ができないんですよね。。。
それでも読んでいただきたいという欲求。。。
登録するとしても明日以降ですね。




10/18(Thu):知人

ハロウィンが近いので
イベントがあるということは新しいお菓子が出るということ。

「……じゃあ、秋一はパティシエになればよかったのに」
「僕は食べるのが好きなんだ」

瑞樹の作ったゼリーを食べながら(ちなみに材料は100均だ)、秋一が答える。

「来週はチョコパフェがいい。かぼちゃプリンが乗ったやつ。……あ、いいこと思いついた」
「それって、俺にとってもいいこと?」
「そんなわけないだろう。僕にとってに決まってるじゃないか」

ここまでくるといっそ清々しい。

「瑞樹がパティシエになって、僕の家に出入りすればいい」

案の定、俺様思考。

「なんだ不満か?」
「そうでない理由を聞きたいよ」
「じゃあ、瑞樹が僕と結婚すれば問題解決だ」







10/17(Wed):小話

暁と悠太
「一緒に死んで」
「嫌だよ。君なんかのために死ぬもんか」

 こんなちっちゃな会話にも愛がある。
10/17(Wed):小話

寛樹さんと亮介さんの冒頭予定
基本ヤンデレなふたり。
 とあるビルの一室には気まずい沈黙が流れていた。
「使えそうだったから」とあっさり言った部下の長谷-ハセ-が差しだしたのは昨日、海に浮いていたという身元不明の男。紺に近い黒の瞳と180センチ以上ある長谷を優に超す身長が印象的だ。
 男はつまらなさそうに窓の外を見ていて気に食わない。
 寛樹-ヒロキ-は内心の動揺を綺麗に押し隠し、机に頬杖をついて男を一瞥した。
「ふーん……。じゃあ君、私の世話でもする?」
 気だるげにこちらを向いた男がこっくりと頷いた。
「じゃあ、後は寛樹さんのお好きなように」
 長谷が上機嫌で去っていく。いつもテンションの高い男である。
「ねえ、亮介-リョウスケ-」
 相変わらずの無言。
「君、しゃべれないんだって?」
 肯定を示す頷き。
 聞こえよがしに大きく溜め息を吐くと亮介は戸惑ったように瞳を揺らした。
「じゃあ、俺が言ってあげるよ」
 少し背伸びをして亮介の首に腕を回して。
「愛してる」

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「すみませんが、勘弁してやってくれませんか」
 絡みつくような視線を挑発的に受け止め、寛樹は妖艶に息を吐く。
「ちょうどいいことに、そこに私に惚れている男がいるんです。その男の目の前で、なんてどうです?」
 





10/16(Tue):小話

瑞樹さんと柚葉さん
一応ゆずちゃんが攻め
 焦ったように自分の手を引く弟の背を見ながら、瑞樹はのんびりと歩いていた。桜はとっくに散り、枝からは葉を覗かせどちらかというと夏に近い風。柚葉はそんな瑞樹に苛立つのか振り返って睨みつけてきた。
「瑞樹っ! 俺、怒ってるんだからな!」
「わかってるよ」
 苦笑しつつ返せば瑞樹の手を握る力が強くなる。たった一歳の差と言えども弟は弟、こんなところはまだまだ子どもだなあと思う瑞樹は中学一年生である。
 人通りの殆どない公園に辿りつき、柚葉がベンチに腰掛けたので瑞樹もその隣へ座る。
「4時に帰ってくるって言った」
 しばし無言の時を過ごし、柚葉がぼそりと呟いた。やれやれと思いつつ予め用意した言い訳をできるだけ誠実に聞こえるように言う。
「しょうがないでしょう。中学生は小学生より忙しいんだから」
「でも、恭介たちと遊んでたじゃん……。俺、見たもん。バス停で」
 恨めしそうに幼馴染の名を告げられ瑞樹もそれ以上の言い訳ができずにいると柚葉は諦めたように笑った。
「瑞樹の優しいところ、好きだけど嫌い」
 言うなり押し倒され唇を奪われる。小4のとき、ピアノ教室で彼女がいたというこの弟はませており、色事にも手慣れていた。
「ね、瑞樹……」
 瑞樹そっくりの柚葉が一度唇を離し瑞樹の肩を握る。お互いによく間違えられていたけれど、瑞樹は不思議で仕方がなかった。瑞樹はこの雰囲気、表情を作ることができない。
「なんか言えよ……」
 歳に似合わない切なげな息を吐いた柚葉は綺麗で、それに見惚れた自分はナルシストなのかもしれないと思いつつ弟の頭を撫でた。
「ごめんね、柚葉」
 妹が生まれてから、柚葉に両親の関心が向かなくなったことで情緒不安定になっていることは感じていたけれど、瑞樹は瑞樹で新しい生活に慣れることに必死で。“兄”であることから逃れたくて、こんな日はつい家へ帰りたくない、なんて思ってしまって。
「誕生日おめでとう、柚葉」
 そっと体を起こし耳元で囁くと、柚葉は満足そうに笑った。
 帰宅し風呂を上がって自室で宿題を片付けていると、柚葉が後ろから抱きついてきた。
「兄貴」
 とっくに声変わりしていた声は自分と似ているはずなのに、弟から発せられているというだけで特別に聞こえる。
「どうしたの。今日はいやに甘えるね」
「だって俺、まだ兄貴からプレゼントもらってない」
 次男特有の甘え上手と言うべきか、長男特有の人の良さと言うべきか。瑞樹は柚葉のおねだりに弱い。
 まったく、「おにーちゃん」とかわいらしく呼んでいた頃が懐かしい。
「な、兄貴。お願い……」
「ちょっとどいて」
 シャーペンを置き、首だけで振り返る。ぱっと目を輝かせた柚葉をベッドへ座らせ、通学鞄に隠していた包みを手渡す。
 包装紙をそっと撫でた柚葉は嬉しそうにそれへ口づけた。
「もしかして、遅くなったのはこのせい?」
「いや。普通に恭介と鬼ごっこしてた」
 肩を竦めて答えると、柚葉はにっこりと笑った。
「ね、兄貴。しようよ」
「断る」
 自慰を覚えた体では何を、と訊くのもあほらしい。この弟と両想いになったときから、幾度となく持ちかけられてきた誘い。今回もにべもなく断ると柚葉は膨れた。
「今日は誕生日なのに」
「あのね、柚葉。そういうのは大人になってからするものなの」
「大人になったら、してくれるの?」
 しまったと思うが柚葉はにやにやしていて、結局この弟が好きなのだと思い知らされるだけで。
「ああ。だからずっと俺の傍にいてね」
 返事の代わりに抱き締められた。
 家では「兄貴」、外では「瑞樹」。家では普通の仲良し兄弟、外では恋人――。
 この関係が歪であることはなんとなく感じ取っていたから、ふたりで決めたルールだった。家族にだけはばれてはならない。
「早く、中学生になりたいなあ……」
 二段ベッドは危ないということで買ってもらったふたりでひとつのベッドに寝転がると柚葉が洩らした。
「いちゃいちゃできないなんて拷問だよ」
 瑞樹は黙って弟の言葉を聞いていた。
 瑞樹と柚葉は幼小中高を併設する私立の男子校に幼稚園から通っている。そこは中高になると同性愛者をいじめ抜く校風があり、いくら兄弟でも今までのように周囲の目をごまかすことはできないだろうと瑞樹は思っている。
 家では今のところばれていない。その上、中高六年も隠し通せるかと考えるだけで気が遠くなる。
 いや、それ以前にいつまで互いのことを好きでいられるのだろう――。
「兄貴」
 柚葉が瑞樹を覗きこむ。
「まーた何か変なことを考えてる」
「んー……」
 恋人である前に、兄でなくてはならない。守らなくては、ならない。
 その晩、瑞樹は柚葉に抱き締められて眠った。





10/15(Mon):図書室

真司と恭介
中1くらい
「なあ、恋って性行為がつきものなのか?」
真顔で緒方に問われ、動揺しすぎてかえって冷静になった樋山の脳は答えを模索する。
「人によると思うよ」
「ふうん……」
彼の片手には源氏物語が握られていて、なぜ古典を読みながら突拍子もないことを訊くのかと考える樋山は実は授業で扱った竹取物語以外の古典を読んだことがない。
「俺は、恋人がいても性行為をしたいとはたぶん思わない。結婚したら少子化対策のためにするかもしれないが」
「う、うん」
なんだか話が壮大になってきたぞ。
そんな樋山へ彼の瞳が近づいてきて。
ーーちゅ。
「樋山とはこういうことをしたいと思う」
実際はかさついてそんな音はしなかったけれど、樋山の中では確かに聞こえた。
彼が何かを言っているが認識できない。
きっと今、自分は真っ赤だ。
そっと自分の唇へ触れる。
ああ、好きだ。




10/15(Mon):小話

暁さんと悠太さん
「要するに君が好きだってこと」
「また気障なことを」
「でも、そんなところも好きでしょ?」
返事の代わりに銃口が向けられた。
「ねえ、悠太」
銃声に掻き消された愛の言葉も、ちゃんと聞いているから。
「あき、ら」
そんなに泣かないで。




10/15(Mon):知人と言い張る君

秋一さんと瑞樹さん
冒頭部分。
柚葉と梓紗の問題をちょっと後半に持ってきて、話の軸を変えました。
でも岸本兄弟の仲は悪い。
 大学が終わりアパートの階段を上ったときまでは心地よい疲労感に包まれていたのに自宅の扉の前に男が佇んでいるのを見つけたときは心臓が跳ねあがった。
 こんなとき一人暮らしは嫌だ。親は遠くにいるし隣近所は殆ど水商売のお姉さんたちだからあてにはできない。男はリュックを背負い、両手に白いビニール袋を提げている。
 大学の友人を呼ぼうかとも思ったが待っている間に事件に巻き込まれるかもしれない。
 ケータイで写真を撮り警察に通報しようとしたとき男が振り返った。
「遅い」
 ああ気づかれた。せめて顔だけでも憶えようと男の顔を見る。
 自分と同じくらいの身長、黒目黒髪、不機嫌そうな声と表情、なのに妙にいたずらっぽく輝く目。
「――秋一!」
「遅い。中に入れろ。手が痺れた」
 高校時代の友人は更に不機嫌そうに目を細めると吐き捨てた。
「ああもう来てくれるなら事前に連絡くれればいいのに!」
「思い立ったが吉日」
「帰ってこなかったらどうするつもりだったの!」
「帰ってくるまで待つだけだ。早く中に入れろ」
「ごめんごめん。散らかってるけど」
「お邪魔します」
 律義に断り部屋に上がる秋一を見てもまだ現実じゃない気がする。冷蔵庫を開けお茶とジュースのどちらがいいか迷っていると顔の横に白いビニール袋が差しだされた。
「岸本。食材だ」
「あ、ありがとう。てことは泊っていく?」
「迷惑でないならば」
「全然構わないけど。どうしたの」
「岸本に会いたくなったから」
 真っ直ぐに見つめられさらりと言う秋一に思考が固まりかけたがそういえばこんな奴だったと諦めに近い気持ちになる。
「そういえば岸本」
「ん?」
「僕はここで待っているから」
「え?」
「片付けたいものがあるなら片付けてこい。キッチンからはどの部屋も見えないから今のうちに」
「え……。秋一が座るスペースぐらいはあったと思うけど」
「そうじゃない。エロ本があったら隠してこいと言ってるんだ」
 真面目な顔で言われリアクションに困っているこちらをどう思ったのか秋一は真面目に続ける。
「岸本も健全な青年だからそういうものの一冊や二冊持っていたところでどうも思わないが僕に見られると気まずいだろう。だから」
 早く行ってこいと消え入るような声で言われたときやっと彼が耳まで真っ赤なことに気づく。
「そんなものないから安心していいよ」
 言っても疑いの目で見られていたたまれない。
さてどうしようかと考えていると秋一が踵を返す。
「ど、どうしたの」
「手料理と言ったらカニ玉だな」
 それって秋一が食べたいだけじゃんと思ったが友人のよしみで黙っておく。
「安心しろ、レシピも袋に入れている」
 言われて袋を探ると確かに入っていたが。
「俺に作れってことだよね」
「当たり前だ。客人に料理させようなどと言語道断」
「なんか腹立つなあ……」
「この家が火事になってもいいなら僕が作っても構わないが」
「遠慮しとくよ。カニ玉ね、はいはい……」
 キッチンから出ていった秋一のことは頭から追い出す。
 袋にはレシピに書いてある材料以外にもいろいろ入っていた。
これも全部使えということだろうか。
 卵を机に載せたとき口端があがりそうになるのを必死で留める。
 久しぶりに会えてうれしいとか、久しぶりにひとりじゃない食事でわくわくする、とか。
 あいつには絶対に言わない。
 いつもより作る分量が多かった割にはあまり時間もかからなかった。
 ふたりでとる少し早めの夕ご飯。秋一が咀嚼するのをまじまじと見てしまった。
「悪くない」
「そりゃどうも」
 勝手に訪問してきて料理を押しつけたくせになんたる言い草だと思うがこんなことで腹を立てていては秋一の友人なんてやってられない。
 日々を生きることに忙しく過ぎた年月を懐かしむ間もなかったが、こうしてふたりでいると思い出に目頭が熱くなりそうで。
「岸本」
 そんなときに秋一が呼びかけたものだから少し焦る。
「元気そうだな」
 その声が微かに笑みを含んでいて思わず秋一の顔を凝視するも彼はいつも通りの不機嫌そうな顔で聞き間違いだったかと首を傾げたが。
「お前が一人暮らしを始めた頃はどうなることかと思ったが……。急にお前の手料理が食べたくなってな、すまない」
「俺の手料理って……。まずいかもしれないじゃん」
「岸本は器用だからな。それに、現に急に言ったものも作ってくれたし味は……悪くない」
 今度こそ、本当に彼は笑っていた。
「ごちそうさま。おいしかった」
 天変地異の前触れだろうか。
 早鐘を打ち始めた心臓を無視してそんなことを考えていたら、秋一は食器を手早く洗ってしまった。
「だから、岸本。一緒に住もう」
 一緒に住む。それは、どこに。誰と。それに、“だから”の使い方を間違っているよ秋一。どんな表情を作ればいいかわからず、黙り込んだ岸本をどう思ったのか秋一はなにやらごそごそとリュックの中身を広げ始めた。
「ああ、金ならちゃんと払うから心配するな」
 こちらを見ずに言われても。いやそれ以前に岸本の意思はどこに。
 自由気儘な親友は上機嫌で鼻歌を歌いつつ、更にとんでもないことを言った。
「今から一週間、僕と岸本は恋人同士だ」
 そう、岸本秋一とはそんな人間だった。

*******

 緑茶をおいしそうに啜る秋一を見ながら、岸本瑞樹は本日何度目かの溜め息を吐く。
 秋一が言うには、同じ名字を持ったせいで出席番号が前後したことから続く腐れ縁のただの知り合い。
 瑞樹の中では、幼馴染と同じくらい大切な親友。
「瑞樹。お代わりをください」
「はいはい」
 物を頼むときは丁寧に。中高時代の教えが生きている、なんて苦く思いながら瑞樹が急須から注いでやると秋一は嬉しそうに笑う。
 ちなみに、なんで急に呼び方を変えたのかというと「恋人だから」だそうで。
 まだ瑞樹が何も言っていないのに。
「秋一。俺と恋人になろうとした経緯を教えてください」
「そんなの、好きだからに決まっているだろう」
 珍しくまともなことを言う。眩暈がしそうになるが大きく息を吸って気持ちを落ち着ける。
「あのね、両想いか片想いかは別として、双方の合意のもとに付き合うんだよ」
「泊まっていっても構わないと言ったじゃないか」
「それとこれとは別!」
 不機嫌に瑞樹を射抜く視線も、内心の不安さを押し隠すように揺れる。そうだ、この目だ。瑞樹は秋一の脆さに弱くて、でも今流されるわけにもいかなくて。
「岸本は――瑞樹は僕のことを親友だと言った」
 自信なさげに伏せられた瞳、言葉を選んでいるような息遣い。
 いつもの秋一と違うようで戸惑う。
「秋一は俺のことを知り合いって言い張るよね」
「僕のことが嫌いなのか?」
「好きの種類が違うの」
「一週間だけなのに?」
「秋一。真っ直ぐな君が偽りの恋で満足するとは思えない」
「よくわかってるじゃないか」
 開き直られた。
「とにかく、泊まるのは構わないけど恋人ってのはなし!」
「黙れ優男」
「やさっ、……ちょっとやめてよ」
「僕が一週間だけでいいと譲歩しているのにそんなひどいことを言うのなら」
 どちらがひどいのかと言いたい瑞樹を無視して秋一はなにやらごそごそと取りだした。
「脅迫もやむを得ない」
「ちょっ……!」
「ちなみに、岸本柚葉と梓紗ちゃんの協力のもとに作成した」
「見ればわかるよ!」
 見せられた写真は弟の柚葉が10歳離れた妹、梓紗にちゅーしようとしているところで、問題は柚葉が瑞樹と間違えられるほどそっくりで、梓紗が兄ふたりにはまったく似ていないことだ。
「これを大学にばらまく」
 冗談とも本気ともつかぬ声。
「瑞樹はロリコンと噂が立ち、後に弟妹だとわかっても今度は柚葉が後ろ指を指されるだろう。さあどうする」
 冷静な頭で考えればそんなはずがないとわかっていても、頭に血が昇った状態。
 こうして瑞樹は秋一の脅しに屈した。




10/14(Sun):旅の終わり

愛って何なのでしょうね。
 泣くなと言われた日から泣くのを止めた。
 泣いてもいいよと言われたから、恭介に縋って泣いた。父の物を奪った優越感が、葵を大胆にさせた。
 呆然とする恭介はかわいい。
 もう、父と同い年には見えないくらいに。
「葵くん、だめ」
「なんで? お父さんとはしたのに?」
「……昔の話だよ」



 四十九日が過ぎて、心に穴が空いたみたいで。
 急にすみれが恋しくなった。
 すみれそっくりと葵と茜、しかし求めているのはそこにない。
 怜司に三人を預けて、夜の街へ飛び出した。


「なんで、気づかなかったんだろうな」
「嫌だ、真司、だめだ――!」



「葵くんたちの前で俺を殴るのを止めてください」
「教育に悪いって?」
 剣呑に細められた目。
「お前の存在自体が教育に悪いんだよ!」
 脇腹に食い込む脚、唇から垂れた唾液を拭う間もなく首を絞められて。
 それでも、あれ以来真司は恭介を葵たちの前で殴ることはなく。



 あいつは、殴られることを嫌とは言わなかった。
 ただ、うわ言のように。
「真司。すみれちゃん。ごめん」その声が聞きたくなくて。



 ホストは辞めた。
 真司は人から見えるところに傷はつけないけれど――見えないところは、つける。
脱いだら一発でばれる。真司が捕まったら葵たちはどうなる。





10/14(Sun):箱庭の光

拍手をありがとうございます。
真司視点の図書室冒頭
今、図書室を改訂のために読み返していますが旅の途中と別人すぎて年月って怖いなあと思います。
真司視点の図書室を書いて、図書室改訂して、Vocal書いて、旅を加筆して。。。本当にすみません。
「好きだ」告げた声があまりにも真剣で切なくて優しかったから。
「俺もだ」真司は答えてしまったのだ。いくら気が緩んでいたとはいえ本心を言うなんて、迂闊にも程がある。平和ボケしすぎだろう。
 案の定樋山は目を見開いており、後悔するも遅い。樋山へ笑いかけ、さてどうやって切り抜けようかと時間稼ぎのつもりで本に目を落とすもまったく頭に入ってこない。
 そんなに人恋しかったのだろうか。焦る思考で真司は考える。
 まさか――男に恋をしてしまうなんて。
 幼小中高大学を同じ敷地内に併設する私立冬炉学園に緒方真司は幼稚園、小学校と通った。エスカレーター式は生徒を駄目にするということで節目ごとにすべて外部生と同じ条件で試験を受ける。点数に満たなければ内部生といえども不合格、当然だ。
最初、真司はそのまま冬炉中学へ進学するつもりだった。しかし、いざ中学受験を控えたときすぐ高校受験が来ることに気づきうんざりした。夏扇学園は幼小中高併設しているが一旦入ればエスカレーター、しかも中高一貫。面倒臭がりの真司にとって、高校受験がないことは男子校という点を差し引いても魅力的で、こうして真司は夏扇を受験し合格した。
 いったいなんのために存在するのか首を傾げたくなるほどこの学校の図書室は真司以外に利用者がいない、しかし人間嫌いの自覚がある真司にとっては快適この上なく、日々を図書室で過ごす。
 時の流れは非常に緩やか、今が何月で何時でなんて図書室にいると忘れてしまう。そんな訳で真司は樋山恭介がいつから存在していたかを知らない。
 同じクラスであることどころか名前を知ったのがたった今、それ以前から図書室で真司の周りをうろついていることは気づいていたものの、なんで本の貸出手続きをしてくれるのかとか昼休みの終わりを知らせてくれるのかとか面倒臭くて訊かなかった。
 樋山恭介は真司にとって、ただそこに存在する者だった。
 そんな樋山がなぜ真司の心を大きく占めるようになったのか自分でもわからない。
 中学に入ったからといって無理して好きでもない連中と群れることなく、ひとり穏やかに図書室で過ごす。担任を含む担当教師陣は憶えたが他は特に印象に残る人間もいない。無口無表情の真司へ話しかけてくる物好きもいない。つまり、話す人がいなかった。誰がクラスメイトで誰が同じ班で誰が同じ通学路で――そんなことはどうでもいい。空虚に過ぎていく日々は本が埋めていった。
 何年もまともに使われていなかったであろう図書室の扉は、つい先日までギィと嫌な音を立てて開いていた。特に気にすることもなく、両手に本を抱えて教室と図書室を行き来する。その音がしなくなった日、真司は初めてこの図書室に自分以外の存在を感じ取ったのだ。
 名前が知りたくて、でも訊けなくて、それどころか話しかけるのも怖い。やっとのことで蝶番のことで礼を言ったときは緊張して名前を訊き忘れた。それから数日。
「緒方」あいつに、呼ばれた気がしたから。
「なあ、お前の名前って何」
 やっと訊けたのだ。樋山は呆れたようでしばらく黙っていた。らしくもなく心臓が早鐘を打つ。
「樋山恭介だよ。……同じクラスって知ってるよね?」知らない。とは言えなくて樋山から目を逸らす。でも、やっと知ることができた。
「樋山。もう、憶えた」嬉しくてもう一度「樋山」と呟くと彼は固まってしまい、真司も気恥ずかしくて読書を再開しようとしたそのとき。
「好きだ」
 それがあいつの声だと認識してしまったから。
 真司は、答えてしまったのだ。





10/14(Sun):小話

亮介さんと寛樹さん
 寛樹の部屋に着くなり押し倒された。彼愛用の抜き身のナイフが亮介の頬を叩く。
「ねえ、亮介」
 黙って見つめ返すもその瞳に宿る狂気を宥める方法なんてわからないから、彼が正気に戻るのを待つしかない。
 彼の正気なんてここ数年、お目にかかってないけれどそれを言ったらおしまいだ。
「嬉しい? 俺と別れて、さ……?」
 清水亮介の幼馴染、岩本寛樹。昨日まで恋人だった男。
 寛樹は愉しそうに口元を歪め、ナイフを見せつけるように手のひらでくるりと回してみせた。
「ねえ、亮介。俺と一緒に死んでくれない?」
「断る」
 亮介の即答にも関わらず喉の奥で嗤った寛樹は躊躇わず自身へナイフを突き立てようとしたので奪い取る。
「あのさあ、ヒロ。矛盾してるってわかる?」
 不満げに亮介を一瞥し、無視する寛樹が腹を押してきて地味に痛いが我慢して首を起こし寛樹を見つめる。
「別れてって言ったのはヒロでしょ」
「亮介が止めると思ったんだもん」
 この女王様気質には昔から頭を悩ませたなあ、なんて過去へ逃避している亮介を現実に引き戻すのはやはりこの幼馴染で。
「ねえ、亮介。俺のこと好きでしょ」
「好きだよ」
「じゃあ、なんであっさり別れたの」
「ヒロが別れたいって言ったから」
 気まずい沈黙。寛樹の体重で脚が痺れてきた。寛樹は何事か考えており、形勢逆転を狙うなら今。
「痛い!」
 寝返りを打つ要領で寛樹を下にし、文句を垂れ流す口を塞いだ。
「ねえ、ヒロ。俺はヒロのこと大好きだけど、ヒロも俺のこと好きだから、したいようにすればいいよ」
 我ながらずるい言い方だと思う。けれど、亮介はどちらでもいいのだ。
 どんな形であれ、寛樹の傍に立ち続けるのは自分だという自負がある。
 返事の代わりに首に腕が回された。
「はやく」
 悔しそうに亮介を見上げるその瞳が好きだ。





10/14(Sun):小話

暁さんと悠太さん
「暁」感情のない声が暁を呼ぶ。もう慣れたとはいえ気分のいいものではない。冷めた目で悠太を見つめ返しても彼の憎しみが暁を貫くのみ。こうなるとしばらくは元に戻らない。
 リビングに置きっぱなしの台本は“ロミオとジュリエット”。せめて彼が本当に死を企てないように見守るとしよう。
 名賀暁の恋人は舞台俳優で、役に食われやすくて、男だ。



 暁の目の前で蹲ってじっと動かない男、名を草場悠太という。暁の恋人で、舞台俳優で、同僚でもある。
 背後から彼に忍び寄りそっと抱き締めた。彼の視線は何もない場所を彷徨い、暁の体温に気づいているかどうかさえ疑わしい。
 それでも暁は抱き締め続ける。“彼”が戻ってくるまで。
「――暁」
 ぼんやりした瞳が次第に焦点を結び、意志を持って暁を捉える。
「悠太」
 いつも不安で仕方がない。彼が戻ってこないのではないかと怯え、それでも役と共に生きる楽しさを知ったこの身では彼を止めることも叶わない。
 ゆっくりと悠太が起き上がる。
「暁」
 甘えたように彼が腕を伸ばすから、暁も彼を引き寄せるのだ。
「悪かった」悪戯っ子のような小さな囁きと口づけ。先程まで死を体感しようとしていたその身は冷たく、役の中でも彼を失うことへのやるせなさが暁を襲う。
「ねえ、悠太」
 呼びかけると腕の中で微かに震える命。
「生きてるって、素晴らしいね」
 身長が同じくらいで本当によかった。すぐ傍に大好きな悠太の顔があって、簡単に口づけることができて。
 抱き返してきた悠太の感触で暁はしみじみと思う。
 神さま。
 この世に悠太を送ってくれてありがとうございます。
 俺は今、とても幸せです。





10/11(Thu):更新

旅の途中27~31完結
一個下に拍手お返事


最後をたぶん加筆しますが、これがラストです。
続きは感想というかネタばれというか、言い訳です。
旅の途中、すごく最低な仕上がりになりました。
図書室とは雰囲気がまったく逆方向に、知人は改訂前なのにここまで書いていいのかと悩みました。彼らがどうなったかはご想像にお任せします。

ただ、安易に人を好きと言っていいのか。
BLのハッピーエンドはだいたい初志貫徹ですよね。
でも現実の男女の恋愛に於いてずっと同じ人を好きでいるのがいかに難しいことか。
もし、恭介が真司を好きにならなくても、真司は恭介に惹かれていったと思います。
誤解を受けそうで、それでも結論を急いで端折ってしまったのですが、真司はすみれを愛していました。加筆するとしたらこの点ですね。
恭介の面影を追ったのも事実、でも、それだけで結婚はできません。
亮介と寛樹、暁と悠太、柚葉に梓紗、真朝……。いろんな人を空気にしてしまいました。和輝なんてキューピットしかしていないし。
怜司なんて元ヤンの空気消せてないし。
でも、彼の兄らしいことなんてこれくらいしかないかも。。。


-----
来年、移転するかもしれません。
Vocal Soulと旅の途中をがっつり最低にしたいので。
自分の読みたい話を書いているのでどんどんひどい内容になっていきます。
これで全年齢対象でもいいのかなあと悩むのですが、その点については最初に悩みました。もう悩みません。
ありがとうございました。

-----
書きたいものメモ
もっと好きだと言ってくれ/君がいなけりゃ最高だ/愛ある傷/幸せを蹴り上げる/Game Over!/Promise Ring/Pure notes/君が好きだと叫びたい/だってずっと傍にいた/侮蔑と羨望/Love is all!/XD/Liebe ist./海の果てに君を/好きだと言ってもいいですか。

10/11(Thu):拍手お返事

続きにお返事
柊さま

せっかく見つけていただいたのにすみません。
Natural Wind、がっかりされたのではないかと思っています。
ショウがすごく我儘に見えるように書き直しました。
しばらくお暇をいただきます。すみません。


無記名さま
ありがとうございます。本当にすみません。





10/10(Wed):更新

Natural Wind完結
Innocent Zero1up

お待たせしました・
リライトしたものの、後半をまだまだ加筆したいと思ってしまいます。しかも前回より勢いが削がれているかもしれません。
Cloudy Sunはしばしお待ちを。





10/10(Wed):小話

瑞樹さんと秋一さん
たまには秋一にも腕をふるってもらいたいと思うも何をさせていいかわからず、無難に米をといでもらうことにしたのはいいけれど。
「これは……」
水を入れなかったらしく焦げてカチカチ、真っ黒な米。しかも、先ほどまで満タンだったはずの洗剤が半分以下に減っている。
「秋一、行動を再現してみせて」
肩を竦めた秋一は無言で再現する。
米を洗う時に洗剤を入れ、洗い、水を切って炊飯器のスイッチを押したらしい。
「瑞樹」
「……よしわかった。まずはここから憶えようね」
にっこり笑った瑞樹を怖いと思ったのは初めてだったらしい。





10/10(Wed):なちゅらる

拍手、ありがとうございます。

少しずつ、できた分だけでも載せていきます。
七月、爽やかな風が教室を吹き抜ける。今は終礼中、ふいにクラスメイトたちがざわめき、うとうとしていた坂部将太は現実に引き戻された。
「坂部くーん、彼氏が来てるよー!」
 笹原のふざけた声で一気に脳が覚醒した。まさかと思い慌てて廊下を見ると、こちらを見つめ、にこりと笑ったヒサと目が合う。
廊下側の席の笹原は桟に身を乗り出しヒサにちょっかいを掛けており、担任の話し中であることを注意する者は誰もいない。
「ヒサぁ、坂部くんのお迎え?」
「笹原先輩、終礼中です」
「俺もヒサが好きだよー?」
「そうですか知ってます嫌いです。ちゃんと終礼に参加してください」
 さりげなくひどいことを言いながら、先輩である笹原を窘める後輩のヒサ。まったくどちらが先輩かわからないがこれもいつもの構図、最近ご無沙汰だったものの見慣れたものだ。
お祈りが終わり挨拶、すぐさま教室を飛び出すも既にヒサは笹原たちに囲まれていたが、ショウの姿を認めるなりこちらへ手を振る。笹原たちもショウを振り返り、なんとなく気恥ずかしくてそっぽを向くとヒサがにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
「あーあ、振られちゃった。笹原先輩、慰めて!」
「はははっ、ほら、ぎゅー!」
 笹原が腕を広げその胸へ飛び込むヒサ、爆笑している日向と駒沢。クラスメイトたちも遠巻きにそれを微笑ましげに見つめていて、彼がどんなに愛されているかがわかり誇らしいような寂しいような奇妙な気分だ。
 ショウが背を向けると、ヒサは引き留めようとはせずに笹原を引き剥がしている気配が伝わってきた。
「じゃあ、僕はもう行きますね。先輩方、たまには部室に遊びにいらしてください。さようなら」
「じゃあねー!」
「ばいばーい!」
 鞄を持ち上げ、階段を降り始めたところでヒサがショウに追いついた。しかしショウに話しかけることはなく、ゆっくり後ろをついてくる。
「ねえ、ショウちゃん」
 下足室へ着いたとき、高三の先輩であるショウへ高二のヒサが甘えるように声を掛けてきた。
「ショウちゃん、こっち向いて。寂しいよ」
 心の奥が鈍く疼く。そろそろと振り返るとヒサがショウを優しく見つめており、体温がじわりと上がるのがわかるも目を逸らせない。
「ショウちゃん、ごめんね?」
 靴を履き換えたヒサがショウに一歩近づく。吐息の触れる距離で彼の瞳に絡めとられた。
「少しでも早く会いたくて――来ちゃった」
 松口久哉。ショウの年下の先輩である。





10/06(Sat):おしらせ

ランキングを抜けてきました。
今までありがとうございました。
今年度中に更新したいと思っています。すみません。





10/04(Thu):おしらせ

更新に見通しが立たないので、10/6に全ランキングを抜けます。
すみません。





10/02(Tue):お知らせとお詫び

私生活多忙のため、更新が滞ります。
次に戻ってきたときはVocalSoulも主も知人も旅も更新します。
すみません。





10/01(Mon):葵くんと茜ちゃん

兄妹弟の会話。
「薫!起きて!」
「んぅ…」
「茜、落ち着け。そのままじゃ薫が骨折する」
「じゃあ葵が起こす?」
「嫌だ」
「葵っ?」
「あ、起きた」

-----

我が家で兄弟は瑞樹柚葉梓紗、怜司真司、真朝暁、葵茜薫がいます。男女分かれた兄弟が好きです。
ちなみに上記は男女の双子が二組…。





10/01(Mon):おっさんとこども

秋ですね
妹の茜が頼りない葵、薫のために常に我慢していることは知っている。だから、葵は妹に逆らえない。

「葵くん、そんなにかっこつけなくていいのです」

おっさんはいつも綺麗に笑う。胸のときめきに幸せを噛みしめつつ、葵も微かに笑った。

「おっさん、言葉遣い綺麗だよな」
「ええ。葵くん、あなたもできるはずですよ。あなたのお母様はよく存じませんが、あのお父様なら」
「おっさん」

そんな切なそうな顔するな。

「高校時代、あなたのお父様と見た月が私にとって一番、綺麗でした」

葵を通して誰を見ているかなんて明白で。その頬に口付けた。おっさんは気付かないふりをしている。
ひどい。この気持ちを認めてすらもらえない。

「葵くん」

「私には過去のことなのです」と静かに告げられた。

好きだと呟く代わりに涙が零れた。



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