馬神弾/バトスピ3期




「だーん、弾さーん。」


話しかけても返事が返ってくるとは全くもって思ってない。
デッキを構築しているときの彼はとても真剣で、異界王との闘いからその行動は更に弾の中で重要性を増したようだった。
そしてその横顔も、変わった。
鋭さとかうまく言えないけれど何かが前とは違う。
怖いと思ったのは紛れもない事実だ。
狂気を孕んだ眼をあたしがまっすぐ見なくなったのはいつからだったかな。

弾はそのことに対して何を感じてるんだろう、何を思ってくれるんだろう。
泣きたくなるような、むずがゆさ。
自分の中でも不完全燃焼で燻るやるせなさが、更にあたしを苛む。
好きなんじゃないの、と誰かが抉るように問いかけてるみたい。
こんなとき、まゐならもっと素早く上手に解決できるんだろう。

あ、涙滲んできた。


「名前」


ぞわりと不意をついた低めの綺麗な声。
刹那背中になんともいえない震えが駆け巡った。
ドクリ、心臓が大きな音をたてて収縮スピードを速める。

あ、れ?
おかしいな、なにこれ。
構って欲しかったのに、いざとなったら振り向くのが怖くなるだなんて。
やっぱり眼を、弾をまっすぐ見ることに恐怖を覚えるだなんて。なんて、どうしてそんな。
ギュッと眼を閉じたら睫毛が震えてるのがわかった。


「名前」

「だ、ん」


腕を掴まれて強制的に弾の方を向けさせられて。
こんなの逃げられるはずないじゃない。
昔とは180度変わってしまった彼を見るのに途方もない恐ろしさを感じる。
にも関わらず視線を外せないでいるのはおかしい。


「どうして、どうして名前は」


俺に怯えるんだ。
苦しげな呻き混じりの耳を掠めるような低音。
身体の芯が蠢いた気がした。
そうと躊躇いがちに伸びてくる指を払う術をあたしは知らないから甘んじて受けそう。

やだ、やだ。
触られたらもうどうにかなりそうなのに。
これ以上好きになったって届くかも解らないのにそんな思わせ振りってあんまりだ。

後ろのドアがコンコンと音をたてる。
一瞬怯んだ弾から距離を取るのは案外簡単で。
思いきり力を込めて突き飛ばしてドアへ足を向けた。


「弾、デッキ組み終わった、って名前どうしたの!?」


予想通りドアの奥にいたのはまゐで、泣きたくなった。
ほら、こんなにもあたしは惨めになるんだ。
走りながらチラと後ろを向いて見た弾とまゐが恋人同士にしか見えなくて、堪えきれなかった涙が溢れた。


そこにいるのはあたしがよかったなんて、言えるわけもないじゃないか。



羽をむしられて諦められるなら



いくらでも、もがれたいのに。





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