馬神弾/バトスピ3期
「言え、さっさと言えよ。バトル中誰を見てた」
「ひ、っあ」
壁に縫い付けられた手首が痛い。
物理的な痛みの他に弾に触れられているからその箇所が火傷したかのように熱い。
じわじわ回る、焼けてしまいそうだ、なんて。
痛みに呻くだけで答えようとしないあたしに痺れを切らしたのか与えられる力が強まって、比例するように手首にかかる圧力も増大。
ごめん、答えられないよ。
弾の質問の真意は残念ながらあたしじゃ理解できそうにない。
ごめんと小さく漏らしたら、緩く弱くだけど首筋を噛まれた。
状況把握ができなくて思わず喉の奥でヒィと限りなく小さな悲鳴をあげてしまった。
情けないあたしの態度に何故か気を良くした弾はかぷかぷと場所を変えて何度も甘噛みする。
痛覚は刺激されないほど弱いけど、くすぐったいような。
でもされればされるほど背中に痺れが走る、ぞわぞわする。
「っ、バトル、見て……?ヒッ!」
「ん、バローネとのバトル中だ」
え、待ってよ。
バトルフィールドからはこっちの様子は見えないはずでしょ。
どうして知ってるの!
眼で訴えたらニヤリと嫌な、まるで背筋が凍るような笑み。
恐怖が沸き上がりそうなのにカッコいいと思ってしまうあたしは本物のバカだろう。
「名前のことで俺がわからないことなんてないんだ」
だから早く白状しろって。
さっきまでとは比にならない強く噛まれた。
跡絶対ついた。
痛い、生理的に涙が滲む。
バローネって名前の魔族と弾がバトルしている間、確かにあたしは弾をあんまり見ていなかったけど、でも!
抵抗したら、もっと酷いことされそうだ。
叫びたくなる衝動を躍起になって抑えた。
もしかしてこれが目的なのかもしれない、性格ねじ曲がりすぎだ。
「ほら、早く」
「いっ!す、スト、ライク・ジー、クヴルムみ、てた!」
「、は?」
あのフォルムに一目惚れした。
綺麗かつ滑らかなボディはジークアポロにはない特徴だ。
それに思わず眼を奪われた。
あたしの言葉に暫し考えていた弾はヒョイとあたしを横抱きにする。
これまた唐突で、しかし抵抗しようにも思いきり噛まれた部分が痛んだのでできない、歯痒い。
「え、弾さんどこいくの」
「……黙れ」
テンションが極限までに低くて、声を聞いて恐怖を感じた。
横暴だよ、勝手に勘違いをしたのは弾なのに。
まるであたしが悪いかのような態度で。
そして何よりそれに流されてる自分が腹立たしい。
本気の怯えを見せたあたしに気づくと、弾は困ったように顔をしかめておでこにキスした。
あ、また流された。
君にすべてなすり付けてしまえ(だって恥ずかしいだろ、スピリットにまで嫉妬したなんて)
[*prev] [next#]