君が嫌いだ

「私は君が嫌いだ」


一目見たら誰もが蕩けてしまうような至極の笑みを浮かべて、目の前の男はアタシに毒をはいた。
いっそここまで断言されると、どこか清々しい気さえしてくる。

あっ、そう。
別に気にしてませんよ、というニュアンスを込めた返事をすれば、柳眉に皺がよった。
グッと強く顎を掴まれて上に向けられる。
抵抗のしようがないくらい強い力だから痛い。
苦痛に顔を歪めれば、恍惚の表情を浮かべるのだ。


「嗚呼、その表情だ」

「アンタさ、何がしたいの」

「そうだな」


私に翻弄され苦しむ君がみたい。
眼球ギリギリを真っ赤な舌でなぶられた。
箇所が箇所なだけに、恐怖に似た何かがゾクゾクと背中を駆け巡る。
こわい、コイツこわい。


「んとに、や、だ!」


突き飛ばそうとしても離れられず、執拗に舌が肌を這う。


「そうだ、もっと私を恐れろ」


嬉しそうに笑みを浮かべたコイツは絶対におかしい。
他に方法はあるでしょと息も絶え絶えに言ったら、また蕩けるような、あれ。

この方が私を君に深く刻み込めるだろう。

コイツはどこかどころか完全に歪んで狂ってる。
薄れゆく意識の中で、彼の息がアタシの中に侵入してきた気がした。


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