安寧のその先、ただ苦痛

「何故、苦しむと理解してまでも拒むのか」

指一本すら動かすことなくうつ伏せに倒れるカズナを、空間の支配者は感情の読めない瞳で見下ろした。
ゆるりとしたスピードで赤い水溜まりが広がっていく光景に、支配者はどこかいたたまれない懐かしさを感じた。
同じ色を持つ者が、同じ存在に命を奪われそうになっているこの状況をいったい、意識のない本人はどう感じているのだろうか。

「何故、お前たちは」

私は何一つ自分で決められなかったというのに、恐怖に打ち勝つことができなかったというのに。

「何故お前たちは決める意志を持つことが出来たのだ」

私に、その強さを教えてくれ。
支配者はそっとカズナの背中に手をかざす。
一瞬眩い光が広がったかと思うと、血溜まりは動きを止めていた。




補足
彼は時間を止めることは出来ないけれど、空間の動きを止めることは可能。
その二つは限りなく同じ様で、そしてけして相容れないもの。


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