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「私ねぇ、中学ん時の彼氏とヨリ戻した」
「…マジで」
「うん」
「そっかぁ…」
「トオルはさ、彼女つくんないの」
「俺はなぁ、ちょっと失恋の傷が深いもんで」
「ふぅん。まあ、引っ張ってないで早く気が付いたほうがいいんじゃないの?」
「お前もな」
「え? 何?」
「何でもねー」

 堀の話によると、その彼氏というのは“藤原弘樹(ふじわら ひろき)”というらしい。
「え、藤原弘樹?」
「そうだけど」
「俺、そいつと友達!」
「え、ちょ、秀、それマジ!?」
「部活でさぁ、大会とかあんじゃん。あれで知り合った!」
 秀が親指を突き立てる。
 堀の元彼話を秀にしたら、友達だったという新事実が発覚。
「どんなやつ?」
「えっと、バスケ超うまいよ、優秀選手で表彰されてたし」


「仙石、綾崎さん、堀の元彼って秀と友達だってよ」
 二人して目を剥いた。吉川にはすでにメールで話している。
 放課後、3人での話し合い。吉川は自分から行かないといっていた。
「これはまたややこしいな…」
 仙石は眉をしかめた。
「結局、宮村くんには言うの?」
「えっと、吉川は言ったほうがいいって。俺もそう思う」
 難題だった。もし宮村にこのことを言ったとしても状況はかわらない。堀は藤原のことが好きで、藤原は堀のことが好き。
 でも宮村がそれを聞いて、堀は自分のものだと主張することもできる。堀は改めて宮村のことが好きになって、また結ばれる。
 どっちの可能性が高いか。
 そう問われれば、前者のほうが高いけれど。
「レミは、二人ともに言ったほうがいいと思う」
仙石が深くうなづいた。同意見らしい。
「吉川さんは? なんか言ってた?」
「なんか…、自分が話し合いに入るとめんどくさいことになるから、結果だけ教えてって」
「ダメ! ユキちゃんに電話して!」
 紫、早く! と急かされ、あわてて携帯電話をプッシュした。
 吉川はすぐに出た。結果を待ちわびていたらしい。
「もしもし、俺」
『結局、どうなったの』
「吉川の意見を最後に聞いてから決める」
『何それ』
「いいから。吉川は、どうおもってんの?」
『…私は、宮村にとって嫌な話になるかもしれないから、宮村が聞きたいって言うなら言ったほうがいいと思う』
「じゃあ、その意見採用でもいいか?」
『うん』
「じゃあ今日。今日の4時に宮村んち。吉川はうちに来て」
『分かった』
「じゃあ切るぞ」
『あ、待って! 二人、いるんでしょ? めんどくさいこと言っててごめんって、言っておいて』
「…わかった」
 携帯をぱたんと閉じると、二人からの視線が痛かった。
「宮村にとって嫌なことかもしれないけど、宮村が聞きたいなら言う。聞きたくないなら、言わない」
「なるほど。宮村くんちに4時でいいのか?」
「ああ、俺が宮村に電話しとくから」
「ユキちゃん…、最後なんか言ってたでしょ」
 鋭い。言わないつもりでいたのに。
「面倒なこと言ってごめんだって」
「そんなことないのにね」
「ああ、全くだ」
 じゃあ、4時に。
 そういって学校を出た。
 時間まで、あと1時間半ある。




(約束の4時)(運命の4時)



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