でもやっぱり



※注意※
これはのらさんへのプレゼント小説です!
のらさんのみ、お持ち帰りOKです
リクエストは「堀宮/夏祭り」です



「夏祭り行きたいなーっ」
 堀はそういいながらソファに背中を預けた。
「来週になかったっけ? 河原でやるやつ」
「うそ!」
 声を上げてパタパタと走り、新聞受けの中をチェックした。するとそこには、花火の絵で飾られた、河原の夏祭りのお知らせが入っていたのだ。
「本当だぁ、宮村も行くでしょ?」
「うん、行こう」
 だが堀はまたしてもソファに体を預け項垂れた。
「宮村、甚平着れないじゃん…」
「あー…」
「私、宮村用に買ってあげようと思ってたのになぁ」
 堀の声のトーンが下がり、宮村の頬には汗が伝った。
 やばい、これは、と宮村の心の中に自分の声が響く。
「宮村ぁ」
「何…?」
「甚平はさあ諦めるからさあ、セーラー着ない?」
 ソファからがばっとおきあがり、堀は嬉々とした笑顔を宮村に向けた。
 宮村の顔が青ざめる。
「絶対に着ないからね!」
「怒ってくれてるの…?」
 堀の目はなお輝く。
「怒ってないから! 堀さんは浴衣なの!? そういう話しよう!」
 えー、と堀は不服な顔をする。
「似合わないから、着たくなぁい…」
 堀はテーブルに顎を載せて、駄々っ子のように口をとがらせた。
「ほ、堀さんの浴衣見てみたいなぁ!」
 宮村がそういったとたん、堀は顔を上げセーラーの件並みの笑顔を見せた。

□■□


 宮村は祭り会場が開く30分前に堀を迎えに行った。もちろん素肌を見せることができないので、服は冬使用でやけに目立つ。
 堀家についてインターホンを押した。すると走ってくる音が聞こえ、ドアからひょっこりと創太が顔を出した。
「おねーちゃんね、今準備中〜」
「中で待っても大丈夫?」
「うん!」
 玄関にあがり、廊下を進むと堀の悲鳴らしき叫びが聞こえる。
「待って! 待って! まだ、もうちょい!」
 容赦なく扉を開けると、悲鳴とともに普段とは似つかないほど可愛らしい堀の浴衣姿が飛び込んできた。
「見るなああぁぁぁ!!!」
「やめて! すぐ包丁取り出すのやめようよ!」
 浴衣姿で包丁を構える堀は妙にリアルだ。
 浴衣の着付けが乱れ、裾が大きく開いていた。
「ほら、せっかく着たのに崩れちゃったじゃん」
 唸る堀に宮村はぱっぱと浴衣をだ出してやり、椅子に座るように促した。
「髪結ってあげるー」
 堀の手首についていた髪ゴムを取り、髪にブラシをかける。コームを使ってうまく髪を持ち上げ、十八番のおだんごを作る。
「やった! 前よりうまくなってない?」
「まあね」
 練習台は沢田である。

 堀は宮村の前でくるりと回って見せた。
「どう? 似合う? 変じゃない?」
「うん、(特におだんごが)すごくかわいい」
 堀はそういって宮村の背中を殴った。
 痛い。

 でもやっぱりかわいい。
(僕の目には君しか映らない)(それが僕の不器用な愛)




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