ロマンティックキス



レミはいいにおいがするね。

においじゃないもん。

…いい香りがするね。

仙石くんが無臭すぎるんだよ。

…においじゃないし。

いーのっ。

ワイシャツ同士が擦れる音がする。ロフトの上で二人はだらしなく寝そべっていた。
レミの長い髪は束になって枕の上に散らばり、甘い香りを漂わせていた。
たまに目線を合わせたり、指を絡めたりするのが互いに好きで、安心する瞬間だ。

二人とも将来、夢を持っているわけではない。互いにいるだけで安心できたし、不幸せなことはこれっぽちもなかった。
いつからだったか親公認の仲となった。高校を卒業してすぐ、籍を入れようと思っていた。自然な考えだったし、そうしてマイナスなことは一つもない。でも今は“先”のことがどうでもよかった。今、幸せならそれでいい。

仙石くん。
レミは仙石くんと結婚したいなぁ。

俺もだよ。

いひひひひひひっ

口を横に開いて笑うレミは、仙石にとってなくてはならない存在だった。いないと不幸せ。いるから幸せ。

ちゅーしてもいいですか。

今日はどこぉ?

昨日は首筋だった。一昨日は指先。その前の日はおでこ。

迷いますなぁ。

そうだね。

毎日違うところにキスをしたら、毎日一か所ずつレミが自分のものになっていく。そんな独占欲に駆られていた。

…今日はそこですか。

はい。ダメでしたか。

いいんだけどさっ

何?

なんか髪の毛にキスって、ロマンティックだなって。

ほうほう。

レミの甘い香りはこの距離じゃないと分からないからね。僕しか知らない、秘密の香り。
胸いっぱいに香りを吸いこんで、優しく優しくキスをする。




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