気まずい!



※一応、付き合う前設定



堀さんからDVD見たいからうち来て、というメールが来た。
指定された時間に間に合うようにのんびり準備をした。フルーツののったケーキを箱に詰める。この間持って行って好評だったものの改良版だ。
クローゼットから適当に服を引っ張り出して、それを着た。


「きたよー」
「いらっしゃーい」

いつも通り自分の家に入るように靴を脱いだ。この動きにもだいぶ慣れて、今では違和感など少しもない。

「今日はね、新しいシリーズを見てみようと思って」
「どんなやつ?」
「解説とかよく見てないから解んないけど、この前見たやつと同じ監督のやつ」
「へー」

好きな小説を書いた人の別の作品、みたいに聞こえはいいがパッケージはいつもと変わらずおどろおどろしい。
だがいつもみたいに血と肉片のように、思いっきりスプラッタなものではなかった。パッケージに強く握られた男女の手が、斜めに入っている。その手にはやはり血が滴っていたが、いつもと違う作風なんだなというのは分かった。


「プレステ点けといてー」
台所に入っていった堀さんから声がかかる。お茶を淹れにいった堀さんは、きっとプレステの起動の仕方を覚えていない。
トップはやはり赤かった。しかし、ストーリーやメイキングなどのコンテンツのアイコンは、ピンクの石が埋め込まれた指輪だ。
台所からマグを二つ持った堀さんが戻ってくる。
「恋愛っぽい話も混じってるのかもね」
「殺し合うのかな?」
「ヤな想像…」
テレビの前のソファに隣り合って座る。この距離にはあまり、慣れていない。
「この前みたいに、泣かないでよォ?」
「あれはかなり怖かったじゃん!」
「あんなのCGくさくて怖がる方がどうかしてるわよ」
コントローラーを手に取り、本編のアイコンのところで丸ボタンを押した。


晩秋。
散歩がてらに寄ったカフェで二人の男女はお茶を飲んでいた。二入で話をしていると、辺りは急に暗くなった。日が沈んだからだ。
カフェの中に入ってレジスターのおいてあるカウンターにむかう。さっきまでいた店員は、だれ一人いなかった。
ライトも点かず、シンとした空気が張り詰めている。二人は互いの手を強く握った。
外に出てみるが、来た道が見えない。携帯のライトを点けてはみるものの、視界50センチといったところか。まったくもって意味はない。
また店内に戻り、スタッフ以外立ち入り禁止の扉を開いて2階へ上がった。
そこは泊まり込みのスタッフ用の部屋なのか、ベッドやテレビ、冷蔵庫などが完備されていた。
華奢な体をした女は、男に細い声で言った。
「ねえ、今日はここに居ようよ」
「そうだな。なんだか外も薄気味悪いし」
ベッドに腰を下ろし、ベッドライトのスイッチをゆっくりと回した。案の定、それはぼんやりとした明かりを灯す。
「私、怖い…。お店の人とか、誰もいないんだよ?」
「大丈夫だって。朝になったら、帰ろう?」
「うん…」
靴を脱いで、女はベッドの上でひざを折った。細い方が小刻みに震える。
「こんなときに悪いんだけどさ…」
男が目線を反らしながらぼそぼそと言った。
骨ばっている手は女のパーカーを脱がし、インナーの裾に手をかけている。
「駄目…かな?」
女は俯いて顔を赤らめた。
その時にはすでに、男の手によって女の白い肌が露わにされていた。


気まず…。
下手に目線を反らせないから、堀さんがどんな表情をしているのかわからなかった。
きっとこの後にゾンビやらなんやらが出てくるんだろうが、さすがに冒頭のこのシーンは目に毒だ。
たまに目を瞑ってはみるものの、目を開くたびに白い肌。俺はどうすればいいんだ。
「なんか…アレだね…」
堀さんの珍しく小さい声が聞こえた。
「う、うん」
返事をしながら顔を堀さんの方に向けた。堀さんは下をうつむきながら、こちらの反応をうかがっている。
テーブルにおいたミルクティーがどんどん冷めていく。
創太がいなくて良かった、とも思った。


やがて気まずさは解け、それと同時にテレビには甲高い悲鳴を上げる女がゾンビに追いかけられていた。
ちらりと堀さんに目をやると、まだ顔が赤かった。
「堀さん…大丈夫?」
「うるさい!」
そんなこと言われると、俺も冒頭のシーンを思い出しちゃうなぁ…。
また顔が赤くなるのがわかった。空気が冒頭の時のように重く沈んでいる。


気まずい!




□■□


一応、"付き合う前に恋愛もののDVD見ちゃって気まずくなる堀宮"ってのをテーマとして書いたんだけど…

別に付き合ってる設定でも問題ないよね(笑)


DVDの内容部分をがんばってみた。そんなかんじで。





20110411

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