不思議ね不思議、わたしあなたといて泣いたことなんてないのにすっごく悲しいのよ



トオルの隣にいったのは高校生になってからだけど、なんだか今までずっと隣にいたような気持ちだった。もちろん小学校も中学校も違った。だけど感覚は幼馴染。他人の隣がこんなにも温かいんだ、って私は初めて知った。


「石川くんちにさぁ」
「何?」
「なんかゲームある?」
「あぁ、結構あるよ」
雨が降ってたから、きっと6月頃。
堀とは5月にはずいぶん仲良くなってたし、とても信頼していた。
それに対してトオルには、他人行儀に石川くんなって呼んじゃってさ。今思えば、めちゃくちゃ恥ずかしい。


トオルが暇な休み時間にたまたま近くにいた。何度も目があったのに、話す話題が見つからなくて居心地が悪い。共通の話題、そう考えて思いついたのがゲームだった。


「ドリキャスとか、スーファミとか、プレステ2もあるし」
「ドリキャスもあんの!?」
「うん。親がゲーム好きでさ、昔のやつとかめっちゃあんの」
「いいなぁ〜」
気づけば話は白熱していて、予冷が鳴り終わっても話は続いた。


それからトオルとはよく話すようになった。
私と堀とトオルはいつも一緒にいて、それはとても楽しかった。悩んでいることは相談したし、言いたいことは我慢しないで言う。正直に付き合う、というのが私たちだった。


それは寧ろ、仇となって――――


「うちにドリキャスしにくる?」
「いいの!?」
思わず張り上げた声が教室に響いて、みんなの視線を集めた。声のボリュームを少し落として話に戻る。
「ああ。この前、部屋の掃除して部屋きれいだし」
「やった!」
「それに話したいこともあんだよ」
「そーなの?」
「うん」
トオルが少し目を伏せたのを、私は見逃さなかった。


「コントローラーでかっ!」
「プレステとかキューブに慣れちゃったら、ドリキャスのローラーってでかく見えるよな」
ゲームをしながら談笑に浸る。
すごく広いトオルの部屋を、もっと狭くしたくなった。私とトオルの距離を縮めたい。距離をなくしたい。
でも、タイミングというものは悪いときに来る。
「吉川ぁ」
「何?」
ゲームのバックミュージックだけが静かに流れる。
「俺さぁ、堀のこと好きなんだよね」


私は一体、トオルに何と声をかけたんだろう。


「じゃあ、気を付けてな」
「うん、月曜日にね」
玄関先まで見送ってくれたトオルは優しかった。
きっとトオルは分かったはずだ。私がトオルに魅かれてたこと。トオルが堀を好きだと言って、私が傷ついたこと。
トオルの家から駅までのまっすぐの道をゆっくり歩いた。蒸し暑い風がべったりと体にまとわりつく。それがやけに、うざったかった。


なんで世界はこんなにうまくいかないんだろう。
少し好きになっただけなのに、なんでこんなに傷ついちゃうんだろう。
私は、私は―――


涙がこぼれていることに気付いた。感覚は無いに等しい。
少しずつ暗くなる空を見上げても、きっと涙は零れ落ちるだろう。
こぼれた涙にはトオルの顔しか映らない。映し出されたトオルは堀のことしか見ていないけれど。















!堀宮CP企画地球のてっぺんにて、君とゆびきりをした様に提出しました。



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