カット・エンド  4 / 4
しおり

 ■ 空は青く、終わりなき憂鬱
 
***



「では、確かにお預かりしましたよ」

あがった原稿を受け取った編集者が、安堵の表情でそう笑った。

「ええ、よろしく」
「……間に合いませんでしたね」

窓枠に切り取られた空を眺め、編集者がそう呟いた。

「……いいのよ」

彼に見せるつもりはなかった。
見るつもりもなかっただろう。
漠然と、けれど、確信を持ってそう思った。

「じゃあ」

そう告げて席を立った編集者に軽く手を上げ、なんとなく複雑な気持ちで、青い空にまた視線を投げる。
細く脆い回路は、ある日突然切れてしまった。
原因は些細なこと。
根底にあるものは、きっと、誰しもが抱える何か。

「……」

この気持ちを表すのに、言葉などなかった。
切れてしまえば終わるだけ。
切れなければ、彼には別の未来があっただろうか。
今日は小日向幸太の死刑執行日。
晴れた青を果たして彼は見ただろうか。

この一ヶ月後、"カット・エンド"と名付けられた本が、各書店の店頭を埋め尽くすこととなる。

<了>


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -