第三次世界大戦は終結を迎え、世界のあちこちは崩壊した。また、巻き込まれた弱小国のいくつかは跡形なく消し飛び、大陸は抉れ、地形そのものに変化があったが故に生態系にも僅かながらに変化が訪れようとしていた。 「俺最近さー水中でも息出来るようになったんだよ」 「マジ?それすごくね?」 「大戦でさ、結構、空気汚れたじゃん?」 「参るよなあ」 「でもさ、水中の酸素って、地上よりまだまだ美味いんだよ」 そう言った彼は科学者であり、水中に別宅を造っていた。近年目覚ましく進歩を遂げた科学は、大戦が終結した後、その力の矛先に迷走している最中だった。 「水陸両用生活を送るつもりなんだ」 「贅沢だな」 「お前もやれば」 「実は俺も、最近、水掻きがやたらと発達してきてて」 「何だ、それなら水中での呼吸もすぐだよ」 地球の大半は海である。戦争とはもともと、限られた土地を奪い合う行為から始まったものであり、そこから解放されたなら、世界は平和になるのかもしれない。 「平和の親善大使になれるな」 「なれるとも」 地球の大半は海である。生態系に変化の表れ始めた人類は、後々、水中へと生活拠点を移すことになるだろう。しかし、笑い合った彼らはまだ知らない。人間が人間である限り、永久不滅の世界平和など、訪れることはないのだ。 何故なら、平和とは、そうでない惨状を知った上で実感出来るものだからである。 そうでなければと願うばかりで。 ノベコン参加作品 _20091014 世界平和 © 楽観的木曜日の女 |