ある日僕は道を歩いていた。どこへ向かっていたとか、何をしていたかなんてそれほど重要じゃない。僕がいいたいのは、そのとき僕の目の前にまた僕がいたってことだ。それは僕をじっと見上げて、僕が歩くはずだった道の目の前にいた。

「また僕か」

 うんざりと僕がそう言えば、僕だって同じだよともう一人の僕が言う。それはそうに違いないけれど、ずっと歩いてきた僕から言わせれば、それはやっぱり僕の台詞だと思った。

「しゃがんでないで立てば」
「だって、こうでもしなきゃ君が行くでしょ」
「君だって僕だろ」
「そういう君だって」

 そうだ。僕は君で君は僕。僕に違いないけれど、僕じゃない僕だ。

「じゃあ、二人で行く?」 

 いい加減僕だって疲れてきた。ゴールはもう目の前、ここまで来たのだから、わざわざ僕だけで行くこともない気がする。
 いいの?と伺うように見上げたもう一人の僕に、いいよと笑って返して。

「やっとだね」
「驚くかなあ」
「驚くと思うよ、まさかそうだとは思わないでしょ」

 そうして十月十日後、僕達は、双子として生まれた。





スワロウテイルお題短編コンテスト参加作品
お題/カラー部分の文章から書き始めること
_2008????

僕と僕じゃない僕と、



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