放課後、空き教室で







昨日、球技大会の前日に、つい拒んでしまった。三井先輩からのキスを。そりゃ、したくなかった訳ではないし、今日三井先輩が告白を受けてくれるかどうかなんて分からない。それに、もしかしたら昨日のキスが最後だったかもしれないのに、拒んでしまったのだ。拒まなきゃ良かったかな。なんて思いつつも、どこかで私は期待しているのだ。三井先輩と付き合える自信や保証なんかこれっぽちもないのに、三井先輩が私に向けるあの眼差しと、好きと伝えても受け入れてくれる三井先輩に、微かな希望を抱いている。ギュッと下唇を少しだけ噛みながら体育館へ向かっていると「山田さん」と声をかけられて振り向くと、宮城くんが軽く手を上げながら小さく笑っていた。




『あ、おはよう...』

「はよ。すぐ試合?」

『う、ん...そう。第一試合』

「そーなんだ。俺、結構後の方だから観に行こっかな」

『えっ?む、無理無理!見られてると緊張しちゃうし...』

「んな事言ったって...結構、人集まってね?」

『あ...』




体育館の入口から微かに見えた体育館内には、クラスの応援なんだろうか、人が集まっていて私は眉を寄せて『ま、そうだよね...』なんて少しだけ肩を落とした。プレッシャーだ。昨日まで三井先輩に特訓と称して練習に付き合ってもらっていたけれど、まだ私は一本もゴールに入った事などないのだ。「んな顔すんなって、三井サンに教えてもらったんだろ?」と宮城くんが片眉を上げながら茶化す様に笑って私の肩をコツンと小突いた。私がコクリと頷くと宮城くんは「なら、大丈夫だって」と肩を少しすくめながら続けるように「な?」と私の顔を覗き込みながら微笑んだ。私もつられて微笑んでみたけれど、緊張からなのかなんなのか、顔がただ引き攣っただけの様な気がした。

















早くも試合後半、と言うかそろそろ試合も終わりを迎える頃。案の定私は1本もゴールを決められていなかった。と言うよりもボールに触れてすらいないかもしれない。やはり素人と言うかお世辞にも運動がそこまで得意ではない人種なのだ。クラスの子たちも私なんかに期待などしやしないのだろう。とりあえず周りをチョロチョロ走っているだけの私にボールなんて回ってこないか。なんて諦めた矢先、運が良いのか悪いのか、マークもされていないがためにボールが回ってきてしまったのだ。思わずキャッチしたは良いものの、キョロキョロどうしたら良いのか分からず身体中の汗がブワッと湧き出た。「いけー!」なんて声が聞こえるも、そんなのテレビ中継なんかで聞こえる応援の声くらいに遠くから聞こえた様な気がする。バクバクと煩くなる心臓の音と、汗で滑ってしまいそうな手でボールをなんとかドリブルでゴール下まで運んでから、三井先輩に言われたフォームでリングへ向けて腕を上げた。無音の、世界にいるみたいだ。私にボールが回った事で残念がる人の声や、「回して!」なんて聞こえる声が、遠くで聞こえている様な不思議な感覚に包まれて、私はリングをただ静かに見つめた。何秒間だったかなんて分からない。ただ、三井先輩と練習した事を頭で繰り返し思い出して、リング目掛けてボールを投げた。多分、ほんの一瞬の出来事だったんだろうけれど、私にはゆっくり、ボールがリングに当たって、コロコロっと少しだけ円を描きながらゴールネットにボールが入るまでの時間が、酷く長くて、何分間もその映像をスローモーションで見ている様だった。『やっ、た...』と小さく漏れた自分の声が聞こえると、周りのざわついた声も聞こえ出して「山田さんやったー!」なんて声と、背中をバシッと叩きながら「ナイス!」と声をかけてくれたクラスの子のおかげなのか、自然と笑みが溢れて緊張なんて吹っ飛んだ。結局、その一本しか入らなかったけれど、一回戦目は勝ったから結果オーライだろう。試合が終わると近くで見ていたであろう宮城くんが「山田さん!」と駆け寄ってきて「やったな!ハイタッチ」と手を掲げてくるから、宮城くんの手に向かって思いっきり手を合わせてハイタッチを一度。ふぅ、と深呼吸を一度するとアドレナリンが切れたのだろうか『あ、汗が...ごめんね?』と今更ながら自分が汗だくな事が恥ずかしくなってきて、体操着の裾で掌を拭うと宮城くんは笑いながら「んな事気にしねーって」なんて笑いながら私の肩に腕を回した。「ちょっとカッコよかったじゃねーか」なんて髪の毛をグシャグシャっと撫でているんだか、乱しているんだか。宮城くんに『ちょっ、ちょっと...』と焦った様に髪の毛を直しながら体育館の2階を見つめると、三井先輩の姿を見つけた。あ、と思いながら声をかけようとしたけれど、タイミングなのかなんなのか、三井先輩はその場から立ち去って行くところだった様だ。三井先輩に向かってあげた手の行き場がなくなって、手を下げると同時に体操着の裾を握ると、宮城くんは「あー、三井サン?いた?」とキョロキョロした後に「この調子で頑張れよ、告白も」なんてコソッと耳打ちしてくるから恥ずかしくなってきて『わ、分かってるよ...』なんて宮城くんが耳打ちした方の耳を手で隠しながら口を尖らせた。



















夕方間近の時間になると、球技大会の閉会式が行われて優勝したクラスの表彰が始まった。結局、私たちのクラスは準優勝。思ったよりも好成績を残せて私としては大満足だ。けれども惜しかったね、なんて声が聞こえてくると、満足だけれどちょっぴり悔しさが残った。「来年もバスケやろうよ!」とバスケで一緒に試合した子が声をかけてくれたけれど、私はただ走り回っていただけなので"うん"と返すのはどうしても忍びなかった。それに、来年は特訓してくれる人も、居ないし。なんて思いつつ、参加賞で配られたパックのオレンジジュースを貰うと、私はすぐにある人を探しに教室を飛び出した。勿論、ある人とは三井先輩である。球技大会中、三井先輩のクラスを見に行ったけれど、どの試合に参加しているのかは分からなかったので三井先輩の試合を見ることはできなかった。聞いておけばよかったかな。と上級生の階の廊下を歩きながら、三井先輩の教室を目指した。告白なんて、人生で今までした事のない私が、ちゃんと出来るのだろうか。分からないし、怖くもある。だけど、何故だかうまくいくような、そんな気がした。いつも弱気なくせに、ウジウジしているくせに、試合のアドレナリンがまだ出ているのだろうか。ドキドキ煩く響く心臓の音はいつもと変わらないはずなのに、少しだけワクワクしている様な、どうしても今三井先輩に好きと伝えたい様な、不思議な気持ちだった。だけど三井先輩の教室の前に来るとそんな気持ちはどこへやら、いつもの弱気な自分に戻ってしまって、開いた教室の扉から顔を覗かせて三井先輩を探したけれど、三井先輩の姿は何処にもないのだ。「あれ?下級生か?珍しいな」と近くにいた眼鏡をかけた先輩が声をかけてきて「誰か探してる?」と問いかけてきたけれど、三井先輩以外の先輩と話したことが無い私は体を硬直させながら『や、だ...大丈夫です...』と首を左右に振ってその場から逃げるように立ち去った。怖かった...。とバクバク煩く鳴り響いた心臓を落ち着かせながら自分の教室を目指している途中で、あ、もしかして、なんてふと空き教室の扉の窓から教室内を覗いてみると、人影が一つ机に突っ伏しているのが見えた。ふーっと一度深く息を吐いて空き教室の扉を開けるけれど、反応がある訳でもなくて、ガラリと扉を閉めてから机に突っ伏している人の近くへと足を進める。三井先輩じゃなかったら?と疑問に思うことも無く、机に突っ伏した人の顔を静かに覗き込むとやはり、三井先輩だった。規則正しい寝息を吐きながら眉を少しだけ寄せた三井先輩の近くにしゃがみ込んで三井先輩の顔を見つめるけれど、深い眠りについているんだろうか、起きる気配なんてまるでない。『み、つい先輩?』とおずおずと声をかけてみたけれど、モゾっと少し動いただけだった。三井先輩の寝顔を見つめていたら自然と口元が緩んできて、一度両手で口を隠してから『好き、です』と小さく一言。ざわついた廊下の音と、空いた窓のせいで入り込んだ風の音が私の小さく漏れた声を掻き消す様に空き教室に響き渡った。『三井先輩が、好きです』と再び呟きながら『つ、つ...き...』と続けたくても言葉にできなくて、『あー...もう...』とため息混じりに声を漏らして膝に顔を埋めて再び『もう、』と声を漏らす。こんなところ誰かに見られていたら完全にヤバい奴だ。人が寝てるところで"好きです"なんて言ってる奴にロクな奴はいないだろう。『好きなんです。すっごく...』と膝に顔を埋めたまま呟いて『だから、私と...』なんて顔を上げると、三井先輩の瞳とバチッと目が合った。





『えっ!?』

「っるせーな、寝れねぇわ」

『え?ちょ...い、つ?え?』

「...」




"いつから起きてたんですか?"なんて質問は私の口から出てこない。ただ、ただ恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じながら三井先輩の瞳から視線を外すと、三井先輩は「良かったな」とぶっきらぼうに呟いて私の腕を掴みながら「試合、勝ったんだろ?」と片眉をあげて小さく微笑んだ。『あ...三井先輩が...教えてくれたので...え?うわぁっ!』"ありがとうございます"と続ける前に腕を引かれて、思わず腰を持ち上げると三井先輩が机から顔を上げて私を見上げる。泳がせた視線を三井先輩に戻すと三井先輩が私の左右の瞳を交互に見つめているのか、少しだけ揺れた三井先輩の瞳に戸惑って『三井先輩?』と眉を寄せながら問いかけると、三井先輩は私の首に手を回しながら私の顔に顔を近づけた。あ、キスされる。と分かっていたのに、昨日の様に拒めなかったのは、これが最後かも、と思ったからなのか、それとも私の気持ちを受け入れてくれた様な気になったのかなんて分からない。瞼を静かに閉じて優しく押し当てられた三井先輩の唇を感じながら、倒れそうになって机に手を乗せると、ガタッと床と机の足が擦れた音が部屋に響く。三井先輩に吸い上げられた唇が音を立てて離れると同時に瞼を薄く持ち上げると、三井先輩ははぁーっと少しだけ長いため息を吐きながら「何で今日は良いんだよ...」と眉を寄せながら私を見つめた。あ、昨日...拒んだから。なんて思いつつも、別に今日はOKと言うわけではないし、私は三井先輩から顔を逸らして『言わなきゃいけない、事があって...』と震える声で小さく呟く。机に置いた手で拳を作るも、私の爪が机に軽く当たって軽く音を立てると同時に再びガタッと机の足が床に擦れる。三井先輩は何も言わないままで、私を見つめているんだろうか。なんて思えば思うほど頭の顔が熱くなって、ごくりと生唾を飲み込んでから『す、きです』と一度ギュッと瞼を強く瞑ってから三井先輩へ視線を戻した。揺れる瞳で三井先輩を少しだけ見つめて握った拳に力を込めてから『三井先輩、私と...付き合って、ください...』と三井先輩を見つめると、三井先輩は何も言わずに私から視線を泳がせてから、瞬きを一度。ゆっくりと瞼を持ち上げた三井先輩は「ちげーだろ...」と言って私の首と腕から手を離した。




『え...?』

「お前は...俺の事なんか好きじゃねーだろ」

『え?す...好きです、よ...』

「キスしてるから、そう思うだけじゃねーのか?」

『違っ...!そんなわけないじゃないですか...!?』

「キスして、自分で好きとか言ってっから...」




「そう思うだけだろ...」とため息混じりに言った三井先輩の言葉に、私の瞳が自然と揺れる。三井先輩の言った言葉が、どんな意味かなんてすぐに分かった。これは、受け入てくれているんじゃない。断られているんだ。頭で理解するよりも早く、胸が押し潰されるように痛くなって、喉の奥がグッと苦しくなった。鼻がツンと痛んで、自然と視界がジワリと滲む。あぁ、やっぱり。三井先輩が私のこと、好きなわけ無いですよね。口から出す事の出来ない言葉を飲み込んで、三井先輩から視線を逸らした。机の上で握った拳を動かせないまま、下唇を噛んで『分かり、ました』と小さく呟くと、三井先輩ははぁ、とため息を吐きながらガタッと椅子から立ち上がる。迷惑をかけているんだと、頭では理解しているのに、涙が止まるわけもなくて、だって、自分の意思で流している涙ではないのだ。涙を止めたくて息を止めて、瞬きを我慢してみても、涙が止まるわけがなくて、頬に流れた涙を自分の手で拭うと、余計に悲しくなってくる。「勘違いすんな。好きなのは宮城なんだろ?」と図上から聞こえた三井先輩の言葉に何も言えなくて、だけど迷惑をかけたく無くて、コクリと頷いてしまった。この関係が終わっても良い。キス、しなくても良い。告白も、迷惑と思われるくらいだったら、忘れてくれていい。そう、一瞬だけ思ってしまったのだ。だけど違う、そんなわけない。勘違いなんかじゃない。キスをしているからでもない。だって私はずっと、私は三井先輩が、好きだったのだから。指先で頬の涙を拭ってから、ごくりと息を飲んで滲んだ視界で三井先輩を見上げた。『...違う...三井先輩が、好きなんです...』と声を絞り出して呟いてから再びポロッと流れた涙を指先で拭うと、三井先輩は眉を寄せながら「そうじゃねーって...」と自分の前髪をクシャッと手で掻き乱す。眉を寄せながら私をしばらく見つめた三井先輩の考えていることなんか分からなくて、ただ、面倒くさいだとか、そんな事を思っているんだろうか。そう思うと余計に悲しくなってきて、私は見ていられなくて三井先輩から視線を外して再び指先で頬を拭った。途端に三井先輩に腕を引かれて、ガタッと三井先輩が机と椅子をかき分けながら窓側へ進んでいく。腕を引かれているせいで後をついていくことしか出来ない私は黙ったまま三井先輩の後をついていくと、突然、窓と窓の間の柱に追い込まれた。戸惑いながら『みつ、いせんぱ...?』と途切れ途切れな声を漏らすと、三井先輩の手が私の顔横に置かれて、三井先輩の唇が私の唇に押し当てられる。訳がわからなくなって三井先輩の胸に手を当てて強く押してみたけれど、ビクともしないし、三井先輩の唇が離れることもなかった。




『んっ、やっ...み、つ...』

「...ハッ...」

『っ...!ふっ、ぅ...ん、』

「...」

『...ッ...やっ...!』



いつもの様に三井先輩の唇が何度か私の唇を塞いで、三井先輩の舌が私の口の中に入り込むと、拒む様に顔を背けた。三井先輩は何も言わないまま、顔を背けた私の首元に顔を埋めていって、三井先輩の熱い吐息が私の首元に微かにかかる。『だ、め』と察した様に三井先輩の胸を押すと、三井先輩の唇が私の首元に吸い付いてジュッと唾液混じりのリップ音を奏でた。ゾクッと何かが昇ってくる様な感覚が怖くて再び三井先輩の胸を強く押す。だけどそんな事したって、意味がないって分かっているし、やめてほしくないとさえ思っている自分がいるのだ。下唇を軽く噛むと、首元から三井先輩の舌打ちが聞こえて、ビクッと身体を強張らせると「流されてんじゃねーよ」といつもよりも低い三井先輩の声が聞こえた。三井先輩の言葉に何も言い返せるわけもなくて、ただ私は黙ったまま動けない。まるで、私のすべてを否定されている様で、軽蔑、している様な口調で、三井先輩のため息が首元にかかって、バクバク煩くなる心臓の音の意味が三井先輩が近くにいるからなのか、私に向けられた三井先輩の言葉にショックを受けているからなのか分からない。私の首元から顔を上げた三井先輩が「山田」と私の名前を呼んでから、私から距離を取る様に少しだけ後退った。「もう、やめようぜ」なんて三井先輩の言葉に顔を上げると「こんな事、お前も本当はしたくねーだろ?」とため息混じりに呟きながら眉を寄せている三井先輩の顔が見えた。"そんな事ない"と言いたいのに、私の口からは何も出てこないまま三井先輩を見つめると、三井先輩は「こんな事して協力なんて言うのも、もう出来ねーし...」と気まずそうに呟いてから私から視線を逸らして「悪かったな、変な事に付き合わせちまって」と自分の首裏を手で摩る。『み、つい先輩?』と上擦った声で呟くと「やめろよ、まじで」なんて三井先輩が低い声で呟いて、外した視線を私に戻した。




「誰でも良いんだよ」

『...え?』

「お前じゃなくても」

『え?み、三井先輩...?』

「...っから、こんな事終わりだって...言ってんだよ」




三井先輩の言葉が信じられなくて、滲んだ視界と揺らいだ瞳で三井先輩を見つめるけれど、焦点なんて合うわけがなかった。何故なら距離を取っていたはずの三井先輩が再び私の方へ身体を寄せて、唇を塞いだからだ。どんなに信じられなくても今まさに現実に起こっていて、酷いことを言われていると頭では分かっているのに、理解できない。何でそんな酷いことを言うくせに、キスなんて、するんだろう。なんで、いつもみたいに、優しく唇を塞ぐのか。訳がわからないまま、いつもの様に三井先輩のワイシャツを掴むと、三井先輩はワイシャツを掴んでいる私の手を一瞬だけ包んで、指を絡める。訳が、わからなくなる。離れた唇の隙間から"三井先輩"と途切れ途切れに声を漏らすと、三井先輩は「だから、それやめろよ」と言いながら再び私の唇を塞いだ。





終わるなんて言わないで
(私の事好きじゃなくても、良いから)




この日を境に三井先輩が空き教室に来ることも無くなったけれど、三井先輩が何であんな事を言いながらキスをしたのか、私には分からなかった。結局は、キスができればそれで良かったんだろうか。それとも最後の思い出に、キスを、してくれたんだろうか。キスをされた意味もわからないまま、私はまだ放課後に、例の空き教室を訪れている。もしかしたらまた、三井先輩が来るかもしれない、なんてありもしない事を期待して。バスケ部の練習を見にいけば良いだとか、三井先輩の教室に行けば会えるだとか、そんな事は分かっているけれど、あんな事言われたのに、どんな顔をして三井先輩に会えば良いのかわからないのだ。と、言うか本当は会いたくないのかも。完璧に振られたし、完全に軽蔑されていそうだし、キスしたら好きになる女、だなんて思われてそうだし。考えれば考えるほど落ち込んできて、机に突っ伏すと机特有の匂いが鼻を掠める。あーあ、振られたのか。振られちゃったんだ。と、今だに痛む胸を誤魔化す様に、深呼吸を一度してから、私は静かに瞼を閉じた。






Modoru Main Susumu