放課後、空き教室で






この3日間、三井先輩と放課後にあの空き教室でキスを、繰り返している。初めてキスをしたあの日からお互いが貪る様にずっと、だ。だけどこのキスが何を意味しているのか分からないままで、と言うよりも分かりたくもないし知りたくもなくて、それに、終わらせたくもない。キスをしなくなったらきっと、三井先輩と会うこともなくなってしまうんだろうな。と思うと胸が苦しくなって思わず三井先輩のワイシャツを掴んだ。窓際の大きな柱に隠れながら三井先輩と壁の間に挟まれている私の唇が三井先輩の唇で塞がれる。何度目か分からない口付けから逃げる様に壁に背中をもたれると、三井先輩の舌が私の唇の割れ目をなぞった。互いの唾液で滑るヌルリとした舌の柔らかい感触に、脳みそも鼻水も唾液も涙も、私の身体中の液体の全てがどこかへ溶け出してしまいそうになる。遠慮がちに唇を開くと三井先輩の舌が私の口の中に滑り込んできて、優しく私の口内をなぞっていく。特に上顎をなぞられると何とも言えない気持ちになって、思わず三井先輩のワイシャツを更に強く握りしめた。ジュルッと厭らしく何かを吸い上げる音が聞こえると同時に壁に置かれていた三井先輩の手が私の髪の毛に優しく触れると、私の耳を隠していた髪の毛が耳にサラリとかけられる。指で輪郭をなぞる様に耳に触られるとゾクッと身震いする様な何かが込み上げてきて、堪らず閉じていた瞼を薄く持ち上げてから瞼を閉じている三井先輩を見つめた。私の舌よりも分厚くて熱い三井先輩の舌が口内を蠢くたびに視界が揺れて、ドキドキと壊れてしまいそうなほどに早く動く心臓の音が三井先輩にも聞こえている様な気がして怖くなる。だけど"もっと"と欲深くなっている自分もいた。ただ、最初は話せているだけで良かった筈なのに。手を掴まれてしまえば、キスをされてしまえば、もっと、欲しくなっていく。ぎゅうっと苦しくなる胸のせいなのか深すぎる口付けのせいなのか、上手く呼吸が出来なくて、三井先輩の唇から逃げる様にワイシャツを掴んでいた手で三井先輩の胸を軽く叩きながら声を漏らすと三井先輩はゆっくりと私の舌を絡め取って私の舌を吸い上げていく。ゆっくりと長く響いたリップ音と共に唇がようやく離れた瞬間、深く息を吸い上げると立ちくらみの様に視界がぼやけた。足に力が上手く入らなくなってガクンと膝を折り曲げて私が尻餅をつくと三井先輩が「お、おい!大丈夫か?」と焦った様に少しだけ声を荒げながら私の視線に合わせる様にしゃがみ込んだ。私は息を深く吸ってから、身体を揺らすほどの心臓の音を止めたくて、床に置き去りになっていた手で拳を作るけれど「山田?」と三井先輩に名前を呼ばれてしまえば心臓の音が落ち着くはずもないのだ。諦めて三井先輩の方へ視線を移すと「おま、顔真っ赤じゃねーか...酸欠か?」と顔を覗き込む様に近づいてくる三井先輩の瞳を見つめていられなくて、声を出すこともできずに拳を作った手の甲で唇を隠しながら三井先輩から瞳を逸らした。正直、酸欠もあるだろうけれどそんな事ではなくて、ただ嬉しいのと恥ずかしいのと、好きな人と、三井先輩と、キスをしているから顔が熱くなっているだけなのだ。だけどそんな事言えるわけもないし、視界の隅で見える三井先輩の痛いほどの視線にバクバクと煩い心臓の音は止まらないし、脳みそも顔も、口の中も、手も、足も、全身が熱くなっていく気がした。まるで、私の身体中の細胞の全てが馬鹿になってしまったみたいだ。三井先輩の痛いほどの視線を感じるのが辛いと言うか、ただ、好きな人に見つめられることがこんなにも恥ずかしいことだとは思わなくて、思わず瞼をギュッと閉じた。その瞬間、唇を隠している私の手が三井先輩の手に掴まれると同時に「隠すんじゃねーよ」なんて三井先輩の声が聞こえてくる。私の唇を隠していた手が三井先輩の手によって無理矢理壁に押し付けられると、私は閉じていた瞼を持ち上げてから、横目で三井先輩を見つめた。動揺した様な、心臓の音と同調する様にドクンと揺れる瞳で三井先輩を見つめていたけれど耐えられなくなって、三井先輩の顔が再び近づいた事を合図に再び瞼を静かに閉じる。あ、また...と期待する様に煩くなる心臓が音を立てながらバクバクとまた壊れてしまいそうな速さで脈を打つ。だけど三井先輩の唇が触れたのは私の唇ではなかったのだ。三井先輩の熱い吐息が耳に当たった瞬間、ヌルッと私の耳を三井先輩の舌がなぞった。ビクッと身体をこわばらせながら肩をすくませて三井先輩の舌から逃げるように首を傾ける。けれど追いかける様に三井先輩の吐息が耳にかかって、私の耳の端が三井先輩の舌でなぞられると堪らなくなって壁に押さえつけられている手に力を込めた。ダイレクトに耳の鼓膜を揺さぶってくる三井先輩の熱い吐息が聞こえてくるたびに、脳内に直接息を吹きかけられている様な不思議な感覚がして怖いのに逃げられない。三井先輩が私の耳を舌でなぞりながら、ピチャリと卑猥な音を鳴らす度に私の耳に三井先輩の熱い吐息が降りかかった。三井先輩の吐息と舌にゾクッと身震いしながら『みつ、いせんぱ...い...』と口から吐息混じりに呟くと、三井先輩の大きな手が私の口を覆い込んだ。途端に三井先輩の匂いが鼻を掠めて、余計に頭がクラクラする様な気がした。ちゅっと軽く響いたリップ音が耳の鼓膜を震わせたかと思えば「誰かに声聞こえたらまずいだろ?」と三井先輩が吐息混じりに囁いてきて頭の中の血が一気に昇っていく。これがどういう状況なのか、何で三井先輩がこんな事するのか、どうしたら良いのか、何も分からないまま『ふっ、ぅ...』と三井先輩の手で押さえつけられている口からくぐもった声を小さく漏らした。三井先輩がしばらく私を見つめていたのが視界の隅で見えたけれど、再び耳に三井先輩の顔が近づいていくのが見えて思わず瞼を閉じて身体を強張らせると、私の口を押さえていた三井先輩の手の力が緩んで私の唇に三井先輩の指が押し当てられる。え、と思いながら瞼を薄く持ち上げるけれど、耳元で「山田、口」と熱い吐息をかけながら短く囁かれてしまえば堪らなくなって口を開くしかなかった。口を少しだけ開いた瞬間、こじ開ける様に三井先輩の指が入ってくると不安になって空いた片手で縋る様に三井先輩のワイシャツを探した。「持ってろ」と私の片手を押さえつけていた三井先輩の手が空気を掴んでいた私の手を誘導する様にワイシャツへ移動させると、答える様に三井先輩のワイシャツを握りしめていく。私がワイシャツを握りしめた事を確認したのか、壁に置き去りになっていた私の手に、指に、三井先輩の指が絡んだ。キツく絡んだ指に驚いていると私の口内に入り込んだ三井先輩の指が私の上顎を優しくなぞった。触れるか触れないか程度の優しいタッチで私の上顎がなぞられるたびに薄く持ち上げた瞼でパチパチと瞬きを繰り返す。何をされているのか理解が追いつかないまま、絡んだ三井先輩の指をキツく握りしめると、喉奥手前の上顎に三井先輩の指が触れるとビクッと身体が震えて床に触れていた私の足がピクリと動いた。どうしたら良いのかも分からずに上顎をなぞっていた三井先輩の指に私の舌が微かに当たると、はぁ、と三井先輩の吐いた熱い吐息を耳元で感じた。その後すぐに三井先輩の顔が私の顔に近づいてくるのが薄目で見えて薄く持ち上げた瞼で瞬きを一度してから揺れる瞳で三井先輩の瞳を見つめると、三井先輩の唇が私の口を優しく塞ぐ。三井先輩の指が入り込んでいた口の隙間から三井先輩の舌が入れ込まれると同時に指が引き抜かれて私の口の周りに唾液が溢れた。垂れた唾液を追いかける様に三井先輩が唇でジュルリと吸い上げる音がして、堪らなくなって三井先輩のワイシャツを更にキツく握りしめていく。三井先輩の舌が私の口内を優しくなぞった後、ちゅっとリップ音を響かせながら唇が離れた。定まらない焦点を合わせる様に三井先輩の左右の瞳を交互に見つめて、まだ近い距離にあるお互いの唇に、お互いの荒い息が微かにかかる。私の指に絡んだ三井先輩の指に力が入って、ぎゅうっと強く握り締められると、三井先輩の視線が私の唇に静かに落ちた。三井先輩が唇を少し開いて、私の唇スレスレまで近付くと「もう、部活行かねーと」と呟いて私の唇を優しく塞ぐ。別に三井先輩のバスケの邪魔をしたいわけではないけれど、この行為が止められないまま絡んだ三井先輩の指を握りしめる。止めたいのに止めて欲しくなくて、でも、この行為が一体何のためなのか、何でこんな事をしているのか理解できないまま、私の唇を三井先輩が塞いでいく。不意に離れた唇の隙間から「明日」と三井先輩が短く呟いた。震える呼吸を整えるために息を吸い込むと、三井先輩が「明日休みだろ?」と問いかけながら私の瞳を見つめる。その瞳が、視線が痛くて、本当は私が三井先輩の事を好きだと知られている様な気がして少しの恐怖感。三井先輩の瞳を見つめていられなくてごくりと生唾を飲み込んでから瞳を逸らすと、三井先輩が「明日、部活の後会おうぜ」と呟いた。『え...?』と三井先輩の言葉が信じられなくて聞き返すと、三井先輩は眉を寄せながら「宮城もいるし、練習見に来いよ。そのついでに会おうぜ」と小さく笑った。それがどんな意味なのか、どう受け止めれば良いのか分からなくて、何故だか胸が痛くなって喉の奥が絞られた様に苦しくなっていく。私が返事をしないままでいると、三井先輩が私の絡んだ指を離して立ち上がってから「立てるか?」と私に手を差し伸べた。私はコクリと頷いて三井先輩の手を取ると、グイッと手を引かれるままに立ち上がる。「5時くらいだな」と頭上で聞こえて顔を上げると「明日」と眉を寄せて小さく笑う三井先輩の顔から思わず顔を逸らした。




「5時だぞ?」

『え、あ...朝のですか?』




今日と同じ事をするのならば、みんなが居ない時間帯なのかと思って問いかけると、三井先輩はブハッと吹き出して「アホか、夕方に決まってんだろ」と笑みを含んだ声でそう言った。熱くなった胸が苦しくて、三井先輩に見えないように背中に手を回して拳を作ると、ギュッと握り締めながら『あはは、ですね...』と微笑んだ。休みの日に三井先輩に会えるのが嬉しいはずなのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるのか、本当は私が誰のことを好きなのか気づかれているんじゃないか、本当に宮城くんの事が好きと言う嘘を信じているのか、色んな疑問が浮かぶ癖に口にできなくて、嘘をついている罪悪感のせいかこの苦しくなる感情をどこにぶちまけたら良いか分からないまま、体育館へ向かう三井先輩に手を振った。


















「ん?あれ?山田さんじゃん」

『...み、やぎくん?』

「見学?珍しいね」




三井先輩が指定した次の日の夕方5時に体育館のそばまで行くと、水飲み場で水を飲んでいる宮城くんの姿があった。声をかけられてビクッと身体を強張らせていると「あはは、俺そんな怖い?」と宮城くんは肩にかけたタオルで口元を拭いながら片眉を上げて口端を持ち上げた。『ちょっと、怖いかな』と冗談混じりに微笑むと「三井サンは?」なんて問いかけられてドキッと心臓が飛び跳ねる。




『え?』

「怖くねぇーの?」

『あ...そうだね。怖くは、ないかな』

「マジで?俺すげー怖ぇーよあの人」

『そうなの?』

「顔が怖ぇーじゃん。こんな感じで」




宮城くんがそう言いながら三井先輩のモノマネでもする様に眉間に皺を寄せてから「ね?」と首を傾げて小さく笑った。私はクスクスと笑いながら『似てない』と呟いて宮城くんを見つめると、宮城くんは「そう?」と肩をすくめてから「山田さん、ちょっと話さねぇ?」と片眉を軽く持ち上げる。私は三井先輩を探さなきゃいけないと思いつつも「三井サン、まだ練習してっからさ」と体育館を指さされると思わずコクリと頷いて宮城くんが腰掛けた体育館の入口へと続く石階段に誘われる様に腰を掛けた。「その距離じゃ話せなくねぇ?」と言いながらふっと笑った宮城くんが手招きをして見せるから、その言葉に従う様に少しだけ近づいてみるけれど「遠っ」と笑われて顔が熱くなってくる。『これで、限界だから』と少し口を尖らせると「ま、良いけどよ」と言いながら宮城くんが自分の膝に腕をもたれ掛けてから「好きなの?」と私の顔を覗き込む様に首を傾けた。





『えっ...?なに?』

「三井サンのこと」

『なっ、え?あ、それは...』

「ははっ、その反応。めっちゃ分かりやすくて良いね」

『え、え?』

「気づいてないの三井サンだけだと思うぜ?」




「あの人鈍感そうだもんなー」と呟いた宮城くんは前を向き直して肩にかけたタオルで汗を拭いていた。気持ちを気づかれている恥ずかしさからなのか顔と頭に一気に熱が集まってきた気がして、自分の手の甲を頬に押し当てて口をつぐんだ。私が黙ったままでいると宮城くんが「片思いって辛いよね」とポツリと呟いた。反射的に宮城くんの横顔を見つめると、宮城くんは困った様に眉を寄せながら「俺も片思い中」と歯に噛んだ。まさか男子とそんなに接点もない私が宮城くんと恋バナをすると思わなくて『そ、うなの?』とドキドキしながら問いかけると、宮城くんは「そろそろカノジョ欲しー」と呟いた。




『え?その...好きな人と付き合いたいじゃなくて?』

「そう、好きな人じゃなくて」

『え?でも、宮城くんモテるからすぐ彼女できそうだけど...』

「マジで?俺すげー振られてるよ?10人くらいに告ったけど全滅だったし」

『じゅっ、え!?そうなの!?』

「すげーだろ?あ、山田さんがカノジョになってくれたりすんの?」

『え!?馬鹿!』

「あはは、馬鹿ってひでーな」

『あ...ごめ...つい...』

「ついじゃねーよ」




「コノヤロ」と宮城くんは小さく笑いながら私の肩をベシンッと軽く叩くと「あ」と声を小さく漏らして「この前三井サンにそれセクハラって言ったばっかだった」とハッとしてから「やべー、セクハラだ」なんてケラケラ笑った。釣られるように私も『言ってたね』とクスクス笑うと、宮城くんは「俺怖い?」と微笑みながら問いかけてくるから、気にしてたんだ。と思うと少し宮城くんが可愛く見えて『ふふっ、怖い』と思わず小さく笑いながら呟いた。「んだよ、もー。全然怖くねーだろ!」と宮城くんも冗談混じりに声を荒げながら顔を項垂れて見せる姿が可笑しくてしょうがない。クスクス笑っていると「おい宮城サボんなー」と体育館の入口から三井先輩の声が聞こえた。一瞬で私の笑い声が止まると同時に、心臓がドクドクと身体中に煩く鳴り響く。声のする方を振り向きながら『あ...』と声を漏らすと三井先輩と視線が絡まる。熱くなる顔が、頭が、一気に思考を止まらせて何も言えなくなった私を三井先輩の瞳が見下す。口も動かせなくなった私に「三井サンが練習終わるまでちょっと話してただけだよね?」とおちゃらけた口調で宮城くんが問いかけてくるから、ブンブンと意味もなく首を縦に振ってみせた。「もうすぐ終わりだから早く戻れよ」と舌打ち混じりに聞こえた三井先輩の声に囚われた様に動けなくなって、三井先輩から瞳を逸らすと、逸らした視線の先に見えた宮城くんが「顔真っ赤」なんて言って茶化してくるから『馬鹿』と小さな声で呟いて口を尖らせる。「宮城」と聞こえた三井先輩の声に「はいはい」と返事をして立ち上がった宮城くんが腰を上げて「じゃあね山田さん」と私に手を上げて見せた。その後見えた"頑張れ"の宮城くんの口パクと共に見えたガッツポーズを見つめた後、私をまだ見つめている三井先輩の瞳へ視線を移す。でも宮城くんと話していた時の様に気軽に話せないのは、緊張しているからか、三井先輩が私を見つめているからか、恥ずかしいからなのか、分からなくて下唇を一瞬噛んだ。三井先輩に「すぐ終わるから、後でな」と言われた一言に顔が熱くなって『まっ、てますね...』と上擦った声が口からちゃんと出たのか出てないか分からないまま、バクバク煩くなる心臓の音を誤魔化す様に自分の服の端をギュッと握りしめた。





どうしよう隠し切れない
(これ以上一緒にいたら、もう)




しばらく熱い顔を落ち着けるために体育館の入口へと続く石階段に座っていた私の隣に三井先輩が腰掛けてきて、驚いて少しだけ距離を空ける様に座り直すと、私の手の上に三井先輩の手を優しく重なる。その意味がわからないまま、近づいてくる三井先輩の顔に驚いて、待ったをかける様に三井先輩の唇に自分の掌を押し当てた。落ち着いてきたはずだったのに再びドキドキと音を立てて鳴り響く心臓の音が私の身体を揺らして「駄目なのかよ」と何故だか少しキレ気味の三井先輩に『み、られちゃいますし...』とモゴモゴ喋ると、三井先輩は口に当てていた私の手首を掴んで「宮城に?」と問いかけながら目を細めた。嘘がやはりバレているのかと思って違う意味でドキドキしつつも、三井先輩の瞳を見ていられなくて視線を逸らしながら『そ、う...ですね』と顔を下に向けて下唇を少し食んだ。三井先輩は少しだけ黙った後、何を思ったのか口に当てていた私の掌に唇を押し当てる。『えっ?』と思わず顔を上げると、三井先輩がちゅっと再び私の掌に唇を寄せていく。三井先輩に手首を掴まれているせいでビクッと反応した私の手は三井先輩の唇から逃げることが出来なかった。三井先輩がゆっくりと一度瞬きをした後「それとも他の奴らが帰るまで、こうしてるか?」なんて三井先輩の声が聞こえると『やっ、』と拒否する様に手に力を込めたけれど、三井先輩に手首を掴まれているんだから動けるはずがない。三井先輩の唇から距離を取ろうと必死で手に力を込める私の手を逃してくれない三井先輩が、何度かちゅっと唇を寄せた後、私の掌が唇よりも柔らかい舌先でゆっくりとなぞられる。私はどうしたら良いのかわからないまま、声が漏れない様に下唇を軽く噛みながら三井先輩先輩の舌がなぞる度にピクリと反応する自分の指が動かない様に力を込めることしかできなかった。







Modoru Main Susumu