その鮮やかな笑顔の裏で 後編



『いっ...やっ、あ...っ...』

「田中さん...嫌じゃなくて、イく時はイくって言わないと...」




「さっきから教えてるよね?」と神くんはため息混じりに呟いて、何度も擦り上げた膣壁を更にグッと押し上げた。何度か達して麻痺したのか圧迫感を感じなくなった膣内が、自然と快感を拾う様に反応して神くんの指を締め付ける。ダメなのに、こんな事嫌なのに、もう秘部の突起に触れられなくたって気持ちいいと自覚してしまうほどの快感が私の頭を白くさせていく。「イけたら終わりにしてあげるから」なんて神くんの言葉に縋って、自分から快感を拾う様に頭の中で膣内の神くんの指の感覚を追いかける。自分から追いかける快感のせいなのか、ヒクヒク蠢く膣内を嫌でも感じて、無理やりされているのに気持ち良いと感じてしまう事実を信じたくなかった。私の意思とは関係なく痙攣していく私の下腹部がどんどん絶頂を知らせて、私は神くんの言葉に期待してやっと終わる、なんて思いと共に『もうイッちゃう』と口から漏らしていく。神くんの指の動きが昇り詰めていく絶頂感に追い討ちをかける様に早まって、指の動きに合わせる様に私の甘い声が口から漏れる。ヒクついていく膣内が、真っ白になる頭の中が、自分の意思で抑えられない甘い声が、私の絶頂を知らせていって、神くんの指の動きに合わせて下腹部から聞こえる水音が激しくなっていく。送られてくる快感にビクビクっと身体を震わせて、強すぎる絶頂の波から逃げたくて足の指でシーツを蹴り上げるのに、私は快感から逃げられないまま、すぐに絶頂を迎えていった。絶頂の余韻に浸る様に漏れた私の荒くなった呼吸と、擦れたシーツと浴衣の音が静かな部屋に響いていく。絶頂を迎えたと同時に神くんの指が引き抜かれると、溢れる様に垂れた愛液が私の秘部を更に濡らした気がした。脱力感に襲われながら呼吸を整えていると神くんの顔が私の顔に移動して、キスされるんだと気がつく頃には私の唇に神くんの唇が優しく当たる。口の中に入り込んだ神くんの舌が、先程とは少し違った味がするのを感じたくなくて、私は抵抗する様に神くんのジャージをギュッと掴んだ。先程とは違うこの味が、自分の愛液の味なんだと自覚させられる様で嫌なのに、抵抗したら何をされるか分からない恐怖感が私を支配する。ちゅっと吸い上げられる私の舌と、唇と、神くんの柔らかい舌が私の舌に絡む感覚を気持ちいいと思いたくなくて、私は更にギュッと神くんのジャージを握りしめると、私の秘部の突起が神くんの熱い指で擦り上げられていく。"終わりにしてあげる"と言った神くんの言葉を思い出す様に、顔を逸らして神くんの唇から逃げつつ『も、終わりって...』なんて涙目で訴えると、神くんは「別に、次イけたら終わりなんて言ってないけど?」と言って私の唇を再び塞いだ。その言葉に私の涙が更に溢れ出して、私を、解放する気なんてないんだ。と頭でどうしたらいいか、なんて考えが消えていく。途端に指で捏ねる様に押しつぶされた秘部の突起から電流の様な快感が走って、塞がれた口の隙間から私の甘い声が漏れ出ていった。




『んっ、んっ...っ...ぅ、ふっ...』

「...自分で気づいてる?田中さんの此処がヒクヒクしてるの」

『やっ、いやっ...っ...あっ...!』

「田中さんの身体は覚えがいいね。もう、ここだけじゃ足りないって...ほら...」





「指少し入れただけで、絡み付いてきてる」なんて、少しだけ膣内に埋め込まれた神くんの指に反応する様に私の甘い声が口から漏れる。神くんの指が膣内から引き抜かれると、秘部の突起が更に指で擦られて私の身体が震えていく。だめ、ダメ、もう、イきたくない。牧さん以外の指でこんなに感じてしまう自分が嫌で仕方がないのに、頭の中でふと、女性はレイプされると身体を守るために膣を濡らす。と聞いたことがあったのを思い出した。そうだ、これは気持ち良いわけじゃない。本能的に私の身体が自分を守っているんだ。だから、だから...これは本気で、感じているわけじゃない。なんて現実を受け入れたくないみたいに頭の中で考えて、口から甘い声が漏れない様にギュッと下唇を噛み締める。神くんの指で秘部の突起が擦られる度に卑猥な水音が私の下腹部から聞こえて、私の身体を震わせていく。耳元で感じた神くんの熱い吐息と共に「ほら、此処すごい...固くなってる」と意地悪そうに囁かれて、私はギュッと瞼を閉じた。徐々に弓形に反っていく腰が私の絶頂を知らせるみたいに震えて、神くんの唇が私の耳に寄せられる。ちゅっと軽いリップ音がダイレクトに私の鼓膜を震わせて、耳にヌルリと這う神くんの舌のせいなのか、ゾクリと私の背中に何かが走った。「...イく時はなんて言うんだっけ?」と、少し低めの声で囁いた神くんの言葉に従う様に"イく"と口から漏らして、目の前がチカチカする感覚と、身体の奥から昇っていく快感に身体を震わせながら何度目だか分からない絶頂を迎えていく。達したせいなのか自分の膣内が物欲しそうにヒクつく感覚に戸惑って、私は『神くん、本当にもうやめて』と途切れ途切れに呟いていくのに、神くんは何も言わないまま、布が擦れる音が部屋に響いて私の膝裏に神くんの手が滑り込む。そのまま折り曲げる様に私の片足が持ち上げられて、秘部に熱い何かが押し当てられる。その何かで秘部の入口を擦られる度にクチュッと響いた卑猥な水音を聞きたくなくて、腰を逃すのに「痛くされたいの?」と耳元で聞こえた神くんの声にビクッと身体を強張らせてシーツをギュッと握りしめた。膝裏を持っていない神くんの片手が私の口を塞ぐと秘部の入口に当てられたソレが私の膣内へと押し進んでいって、私は何かに気づいた様に瞼を持ち上げながら『嫌!いやっ!』と必死に神くんへ訴える。神くんは「大丈夫、もう中が気持ち良いって覚えたでしょ?」なんて耳元で熱い吐息と共に囁いて、私の耳にかかる神くんの熱い吐息を感じながら口に置かれた神くんの手を退かそうと必死で神くんの手首を掴んだ。大丈夫じゃない。全然大丈夫なんかじゃない。初めては...初めては牧さんが...牧さんじゃなきゃ...。なんて心の中で叫んだって、神くんには届く事はなくて、私の必死な抵抗も虚しく、徐々に私の中に熱くて硬いソレが埋まっていく。




「あー...きっつい...田中さんの中、あんなに解したのに...やっぱ狭いね...」

『やああ!いっや...ッ...やめ、やめて...!!』

「...ねぇ、田中さん...暴れたらどうなるか分かるよね?」




「酷くされたくないでしょ?」と耳元で聞こえた神くんの言葉に、私の抵抗が弱くなる。だけど、ここで抵抗をやめてしまったら本当に神くんが初めての人になってしまう。それだけは避けたくて、私は神くんの手首を掴んでいた手に力を込めるのに、神くんは意地悪そうに小さく笑って「あ、そう。分かった」なんて言って私の膣奥まで一気に自身を貫いた。感じたことない圧迫感と、焼けた様に熱くなる下腹部と、最後まで挿れられてしまった絶望感で息ができないほど苦しくて、私は喉を天井へ反らしていく。驚いた様に見開かれた私の瞳が、ゆらっと揺れて、瞬きが出来なくなる。なに、なんで、入る筈ない。だって、私初めてなのに、そんなに…急に…入るわけなんかないのに。困惑していく私の頭が、「田中さんみたいな悪い子には、お仕置きしないとね」なんて聞こえた神くんの楽しそうな声が、ジンジンと更に熱くなる私の膣内が、痛いはずの秘部の入口が、全てが悪い夢を見ている様で、私は神くんの手首を静かに離した。確認するように手を下腹部へ滑らせて、繋がったソコを信じたくなくて手を寄せる。私の指先に当たる神くんの腹筋が、私の指先に当たる繋がったソレが、神くん自身なんだと信じたくなくて、神くんのお腹力いっぱい押しながら『抜いて、抜いてよ!』と声を荒げた。神くんはため息を吐いてから私の口から手を離して「こんなに俺のに絡みついてくるくせに、抜いてじゃないでしょ」と笑みを含んだ声でそう言って、私の唇を強引に塞いでいく。同時に神くんの自身がゆっくりと引き抜かれて、また一気に奥まで貫かれる。こんなの、嫌なのに、嫌なのに。神くんの舌が器用に私の舌を絡め取って、口の隙間から漏れる声が甘くなると同時に、私の膣内が余計に熱を帯びていく。こんなの、違う。違う、私じゃない。知らない、こんなの。と思いながら私の目尻に溢れる涙が何度も伝って、下腹部から聞こえる厭らしい水音が私の意思とは関係なく更に激しさを増していった。




「このグチュグチュって音、田中さんが出してるんだよ?聞こえるよね?」

『やっ、いやっ…やぁ…ッ!』

「嫌?嫌なのに、中こんなにヒクヒクさせちゃうんだ?」

『ちがっ…ッ…やぁ、やだ…ッ…やめて…!』

「…あのさ...田中さん声、我慢できないの?」




「我慢しないと本当に誰か来ちゃうんじゃない?」なんて神くんの言葉に下唇をギュッと噛むと、神くんが私の膝裏から手を離してシュルっと布の擦れる音が部屋に響いた。途端に私の唇に何かが触れて「これ、噛んで」と神くんに言われるがまま、誰かに見られたくない一心で下唇を噛んでいた歯を離して唇に当てられた何かを噛んだ。「頭少し上げて」なんて、神くんの言葉に従って頭を少し浮かせると私の首の後ろで布の擦れる音が再び響いた。何をされているか分からないまま、私が黙っていると「髪の毛絡んだりしてない?痛かったら言って」と、優しい言葉をかけられて余計に私の頭が混乱していく。私が何も言わずに暗闇に浮かび上がる神くんのシルエットを見つめると「田中さんが今噛んでるの浴衣の帯なんだけど…」と説明する様に言葉を投げかけてくれる。なのに、続ける様に口にした「なんで口塞いだら、中…締まったの?本当は苛められたい、とか?」なんて言葉に私は首を左右に振るしかなかった。そうだ、初めてなのに無理やりしてくる人なんだから、優しいわけはないのに。なんで少しでも優しいと思ってしまったんだろう。と更に帯を噛み締める。神くんの手が再び私の膝裏を持ち上げて、余計に深く入り込んだ神くん自身に驚いて帯を噛んでいるはずなのに私の声が漏れていく。




「奥、締まるね...指で教えてあげたもんね、此処が気持ち良いところだって...」

『ふっ...う、んぅ...ッ...』

「それともまだよく分かんない?これ、此処...一緒にしたら分かるかな?」

『...?ん、ぅ!?ふ、う、う、うっ!!』




突然秘部の突起を指で擦りあげられて私の身体がビクッと震える。同時に刺激された途端にコレが気持ち良い事だと教え込まれる様に私の頭が白くなって、何かに縋りたくなっていく。神くんの腹筋に触れていた指先で探る様に神くんのジャージを掴んで、神くんが送ってくる快感に耐える様に帯を更に噛み締めた。神くん自身が奥に当てられる度に熱くなる身体が、勝手に力が入って頭の中で快感を拾い上げる。こんな、こんなの、ただ嫌で仕方ないのに、怖いだけなのに、牧さんじゃ、ないのに。考えれば考えるほど背徳感が私を責めて、なのにゾクッと私の背中に何かが走った。何度か捏ねる様に秘部の突起を擦られると私は簡単に絶頂を迎えて、膣内が締まったせいで神くん自身が頭の中で浮き彫りになっていく。唾液が溢れて濡れた帯を必死で噛み締めるのに、声が漏れて私の身体が震えていった。それでも止まらない神くんの腰の動きと、秘部の突起を擦る指先に翻弄されて私の身体が再び熱くなっていく。




「あー...すっご...締まって...イッてるね」

『ふっ...う、ぅ...ん、っ...』

「でも牧さんが知ったら悲しむだろうなー...彼氏じゃない男に簡単に感じちゃってさ...」




「田中さんって悪い子だよね、本当」なんて言った神くんの言葉に私の胸が締め付けられて、喉の奥が苦しくなる。ひどい、酷い。こんな事望んでしているわけじゃないのに、神くんが無理矢理、したことなのに。と涙が更に溢れ出ると、神くんの腰の動きが早くなって、神くんが私の秘部の突起から指を離すと同時に私の顔横に手が伸びた。耳のそばでシーツの擦れる音が聞こえて、顔横に神くんの手が置かれたのが分かると同時に更に繋がったそこに体重をかける様にして動いた神くんの腰のせいで、神くん自身が更に深く入り込む。奥に当たった瞬間にヒュッと息を思いきり吸い込むと、全ての神経が奥に集まっているんじゃないかと思えるくらいの強い快感に頭の中が真っ白になって、一気に声が出せなくなった。




「ッ...奥すごいうねってるよ...田中さん、初めてなのに中でイけそうだね」

『ッ...っ、ぅ、ふっ...』

「苛める度、中締まってるし...」

『ッ!んっ、んぅ...ん、んん!』




ぶつかり合う肌の音が更に激しくなって、下腹部から聞こえる水音が増していく。私の愛液の音だなんて自覚したくもないのに、口から漏れる甘い声が、震える身体が、敏感になった様な下腹部が、白くなる頭の中が、その全てが私がどれだけ感じているのか自覚させているみたいだった。「ほら、此処...この奥、グチャグチャに突かれて中イキしなよ」と言葉と共に早くなる神くんの腰の動きが私の頭を更に白くさせて、私の顔に近づいてくる神くんのシルエットにビクッと身体を震わせると、私の口の帯が神くんの歯で器用に首まで下される。キスを期待しているわけでもないのに私の中の熱がジワリと溢れた気がした途端に、神くんが「なんで締まったの?」と意地悪そうに呟きながら私の口を優しく塞いだ。ちゅっと軽いリップ音が響いて唇を少し離しながら神くんが「そんなに、キスして欲しかった?」なんて言った後にまた唇が塞がれる。違う、違うのに、キスも、えっちも、して欲しいのは、全部...牧さんなのに。なんて頭の中で否定するのに、私の良いところを擦り上げられると頭が真っ白になってなにも考えられなくなっていく。絡めとられていく舌が火傷しそうなほど熱くなって、舌に集中するとクラクラして、他に意識を飛ばそうとしても繋がってる膣奥の快感が頭から離れない。駄目だと思えば思うほど、私の身体が熱くなって、「田中さん、イッて?ほら、中でイッて...」なんて、呪文の様に唱えられた神くんの言葉のせいなのか無意識に私の中が神くん自身を締め付ける。瞬間に神くんの小さく笑った声が聞こえて、私の口が再び塞がれながら重点的に私の良いところが突き上げられていく。電流の様な快感が私の足先まで流れた気がして、足先でシーツを蹴り上げると、逃れられない絶頂感に身体を震わせながら神くんのジャージをさらにギュッと握りしめた。「今日は俺も、もうイくから」なんて言葉の意味を理解できないまま、私は絶頂を迎えて、それでも止まらない神くんの動きが私の熱をまた昂らせる。どんどん早くなる神くんの動きに耐えきれなくて私は神くんの舌から逃げる様に口を閉ざした。神くんに合わせて揺れる私の身体が、口を閉ざしているのに私の唇に押し当てられる神くんの唇が、突き上げられる私の良いところが、荒くなる神くんの息遣いが、嫌でも耳に届く結合部からの水音が、中で一層大きくなる神くん自身が、コレでやっと解放されると知らせていく。終わって、早く、早く、そんな事ばかりを考えるのに、私の熱は再び昇っていって『いや』と小さく口にしたせいで開いた口の隙間から神くんの舌が滑り込む。絡めとられていく舌のせいなのか、早くなる動きのせいなのか、私の良いところが擦りあげられているのせいなのか、私の頭を白くさせて、私は思わずギュッと強く目を瞑った。




「ハッ...中で、出すから...」

『ッ...!いやっ!だめっ!!やっ、やめっ!ッ...やぅ...んっ、ん、んん!』




口を離した隙間から聞こえた神くんの言葉に頭の中が別の意味で真っ白になって、必死に声を荒げるのに再び口を塞がれる。抵抗しようと神くんのジャージを掴んでいた手で神くんの身体を強く押すのに、神くんの手が私の指に絡まって布団に押し付けられていく。『やめて!』と何度も神くんの唇から逃げてる訴えるのに、神くんが追いかけるように私の唇を塞いで、私は言葉にならない声をあげながら、絶頂へと昇りつめていった。絶頂を迎えた瞬間に私の中で硬さを増した神くん自身に抵抗なんてできないまま、私の膣奥に生暖かい何かが注がれる。出されている感覚なんて初めてで分かるはずもないのに、動きを止めて奥に押し付けられた神くん自身のせいで嫌でも理解させられた。ポロポロと流れ落ちる涙と、絡めとられていく舌を感じながら私は抵抗なんて意味ないんだ。と今更理解して全身から力を抜いていった。



















あの後、すぐに部屋を飛び出して、シャワーを浴びて、急いで自分の布団へ駆け込んだ。こんな真夜中の出来事、誰も気づかない。誰も知らない。誰にも、言えない。もっと、抵抗すれば良かった。もっと、叫んだら良かった。後悔したってもう遅いのに、もう、清らかな身体じゃないのに、牧さんにどんな顔して会ったらいいか分からない。裏切ってしまった様な気持ちと、牧さんが好きという感情と、別れたくないのに、神くんともどんな顔をして会ったら良いかわからなくて、私はその日泣きながら朝を迎えた。朝、みんなが起きる前に急いで目の周りをタオルで冷やして、化粧で腫れた目を誤魔化して、他のマネージャー達と荷物をバスに詰め込んで、帰りのバスに急いで乗り込もうとした途端、横から牧さんに「昨日はすまなかったな。大丈夫だったか?」と問いかけられた言葉に、気づかれているんじゃないかと思って何も言えないまま目を泳がせると「部屋に来い、なんて自分から言っておいて...部屋に居たのが神だったから驚いただろ?」なんて少し困った様に牧さんは笑った。私はその言葉に静かに頷く事しか出来なかったのに、後ろから突然聞こえた「本当、びっくりしちゃいましたよ」なんて神くんの声に身体をビクッと震わせる。私が後ろを振り向けないまま、牧さんのジャージの裾を静かに掴むと神くんは「田中さん、牧さんだと思ってたみたいで布団に潜ってきたんだよね?」なんて牧さんと私以外に聞こえないトーンで言ってからクスクス笑った。私は焦った様に神くんへと顔を移動させて、神くんが昨日のことを言ってしまうんじゃないか、なんて恐怖に眉を寄せて神くんを見つめる。神くんはそんな私を見て小さく笑うと「でも、トランプ1回してそのまま帰っちゃいましたけど」なんて、牧さんにニコッと笑ってみせた神くんの笑顔に私は思わず下唇を噛み締めた。




「そうなのか?」

『...は、はい...』

「田中、具合悪いヤツに何してるんだ...」

「あ、凄い楽しかったんで気にしないでください。田中さん意外とトランプ強くて...あーでも、強いて言うなら...もう一戦、したかったかな」





その鮮やかな笑顔の裏で
(本当は何考えてるの、神くん)



「ね?田中さん」と聞こえた声に私は何も言えないまま、ただ黙って神くんを見つめた。「じゃあ、乗るぞ」と言って先に行ってしまった牧さんを追いかける様に足を進めると「初めてが俺だって、牧さんが知ったらどうなるかな?」なんて声が後ろから聞こえて、また動けなくなってしまう。固まった私に「大丈夫。言わないよ...だから、またトランプ...してくれるよね?」と笑みを含んだ神くんの声が、私の頭の中で何度も繰り返し再生された気がした。