はやくその毒をください 後編




『あっ...やぁ...あ、ああ!』





ベッドのスプリング音がギシギシと軋む音と共に「もう出すから」と、神くんの言葉にコクコクと何度か首を縦に振ってから神くんが送ってくる快感に耐える様に下唇を噛み締めた。速度が速くなるにつれて私の中で神くん自身が膨張する感覚と、自分の奥がヒクついている感覚が嫌でも頭に浮き彫りになる。絶頂を迎えそうな瞬間にコンドーム越しでも出されている感覚がを感じて、神くんが達したことに気がつくのに、グリッと奥に押し付けられた瞬間に私も合わせる様に絶頂を迎えていく。ビクビクと震える身体が、神くん自身が引き抜かれて下唇を噛み締めているのに口の隙間から甘い声が漏れてしまう。まるで、私がまだ神くんから送られてくる快感を求めているみたいに。恥ずかしくて思わず自分の口を手で塞ぐと、神くんと目があって、神くんは目を細めながら小さく笑った。「なに?まだ足りないの?」と意地悪そうな笑みを含んで言った神くんの言葉にゾクッと私の背筋に何かが走ったのを感じて、誤魔化す様に『違う』と否定するのに神くんは「俺は、足りないけどね」なんて吐息まじり漏らしていく。え?と驚く間もなく私の身体が無理やり反転させられて、うつ伏せの状態で後ろを振り返ると、神くんの顔が私の耳の近くに寄ってくる。何かと思って戸惑っていると「最後なんだから、沢山しないと」と囁かれて私の秘部に神くん自身が押し当てられる。ビクッと私の身体が硬直したのも束の間で、すぐに奥へと押し進む神くん自身に『嫌っ!』と否定の言葉を漏らすのに、神くんは私の言葉なんて聞いていないみたいに私の腰を少し持ち上げながら「膝立てて」と私の耳元で続けて囁いた。私は下唇を噛み締めて、震える身体を支える様に膝を立てていく。最後、今日で最後。と自分に言い聞かせながら膝を立たせて、神くんの枕に顔を埋めた。





「ッ...さっきイッたばっかだから辛い?」

『ふっ、うぅ....あっ、あ...?...ッ?」

「どうかした?」

『やっ!やあっ...あっ、あ、あ...』

「ねぇ田中さん、どうかしたの?」





囁く様な、意地悪そうな笑みを含んだ様な神くんの声がして、私の耳に神くんの舌が伸びる。勝手に震える私の下腹部が、勝手にヒクつく私の膣内が、今まで感じたことの無い快感を感じる様にビクついて私の口からとめどなく甘い声が漏れていく。なに、コレ...なに?なんて頭で考えるのに、神くん自身が上下にゆっくりと擦り上げられているだけの振動で私の瞳がジワリと滲んだ。「此処突くの、ほぐれるまでちゃんと待ってたんだよ?」と私の舌に耳を這わせながら囁いた神くんの言葉を理解できないまま、私はベッドシーツをぎゅっと掴んで、逃げる様に腰を引いた。そんな事、神くんが許してくれるわけもなくて、追いかける様に徐々に埋まっていく神くん自身に何度か空気を食みながら、声にならない声をあげていく。何がこんなに気持ちいいのか分からなくて、もう、これが快感なのかすら知りたくもないのに、神くん自身はゆっくりと捏ねる様に私の膣内を擦り続ける。今までよりも激しく動かれているわけでもないのに、全身に汗がジワリと噴き出るかの様に身体が熱くなって、涙で滲んだ視界が更に滲んで、口から漏れる声を止めることができなくて、まるで自分の身体じゃない気がして怖くなるのに、身じろぐ事しか出来ない私はこの快感を受け入れるしかなかった。





「自分で気づいてる?俺の先に勝手に吸い付いてきてるの、田中さんの子宮だから」

『いっ、や...あ、あっ、あっ...ッ!』

「子宮こんなに降ろして、そんなに気持ちいいんだ?」

『あ、あっ...あ、あ、あ、ッ...』

「激しくしたら田中さん壊れちゃうんじゃない?」





囁かれた言葉にゾクっとしながら、期待している訳でもないのに更にベッドシーツをきつく握りしめた。神くんが私の奥へ進んでいく感覚と、ギリギリまで抜かれる感覚と、耳元で聞こえる神くんの熱い吐息が私の頭を支配しているみたいで、何も考えられなくなる。徐々に神くんの腰の動きが早まって、私はすぐに絶頂を迎えていった。飲み込む事も忘れた唾液が私の口端から伝って、溜まった涙が神くんの枕を濡らしていく。「イッてる?」と笑みを含んだ神くんの声に返事もできなくて、私の震える腰を押さえつける様に神くんの手に力が入った気がした。





『あっ、あっ...あ、あ!』

「きッ...つ...田中さん力抜いて」

『やぁあ、あ!あ、あ!』

「田中さん聞いてる?」





力抜いて、なんて言ってくるくせに腰の動きを緩めない神くんのせいで、私は再び絶頂を迎えてしまう。「あー、すご...またイッたんだ?」と私の耳元で聞こえた神くんの声にすら反応する身体が、溶けた様に熱くなる下半身が、自分の意志では止められない甘い声が、憎いはずなのに私の身体を熱らせる。微かに残った私の理性が遮る様に頭の中で、最後、今日で最後。と繰り返しているのに快感の波に消えていく。腰を打ちつけられるたびに響く肌のぶつかり合う音と、結合部から聞こえる水音が更に私の身体を熱くさせて、それが嫌なのに目の前も頭もクラクラする。『待って』と懇願する様に何度も口を開くのに、私の甘い声でかき消されて、再び昇ってくる絶頂感に歯を食いしばった。途端に抜かれた神くん自身に驚いて神くんを見つめようと視線を動かすと、神くんに腕を引かれて私の身体が仰向けにされる。私は抵抗もできないまま、秘部に当てられた神くん自身が私の中に入ってくるのをひたすら待った。だけど待っても待っても神くん自身が中に入ってくる感覚はなくて、ただ、神くん自身が私の秘部に擦り付けられてる感覚に戸惑って、神くんを見つめると、神くんは小さく笑いながら「田中さんの口からどうして欲しいのか聞きたいな」と目を細める。私は首を小さく横に振りながら否定するのに、神くんは更に口端を少し上げて「これ、お願いじゃないんだけど」と私の膝裏を持ち上げた。





『やっ...だ...ッ...』

「自分の立場わかってないみたいだけど、最後にしてあげてるって言ってるんだから俺の言うこと聞かないといけないんじゃない?」

『ッ...ごめっ...なさ...っ...』

「謝罪とかいらないから、どうして欲しいかだけ言ってくれる?」





神くん自身が擦り付けられる度に聞こえる水音が増していく気がして、ヒクつく奥をどうにかして欲しくてたまらなくなる。さっきイけなかったせいだ。神くんが脅してくるから。だから、だから仕方なく、こうするしかなくて。自分に言い聞かせる様に言い訳を並べて『挿れて』と小さく呟いて下唇を噛むと「挿れるだけで良いの?」なんて追い討ちをかける様に神くんが問いかけてくる。グッと一瞬だけ更に下唇を噛み締めた後『いっぱい、動いてください』と震えながら消える様に呟いた。瞬間に神くん自身が一気に私の中に入ってくる感覚と、押し広げられる膣内と、先程からヒクついて仕方がなかった膣奥が、満たされる様な感覚にゾクッと私の背中に何かが走る。同時に迫り上がってくる絶頂感に腰を仰け反らせると、神くんは小さく笑いながら「そんなにコレが欲しかったの?」と更に奥へと自身を進めた。




はやくその毒をください
(はやく、はやく終わって)


早く終わって欲しいと願っている筈なのに、胸が締め付けられるのは何故なのか、自分でも分からなかった。