『きゃあああ!!』





私の叫び声が真っ暗な部屋に響いた深夜0時。目の前にいた男がニヤッと笑って「近所迷惑」と一言呟いた。私は1人で自分の家にいたはずで、目の前の知らない男を家に呼んだことも、家の中に招いたこともないはずだ。それに目の前で私を見下すようにして笑ってるこいつは、私の見間違いじゃなかったら壁から出てきた。壁から人が出てくることなんてありえない。夢?夢だ。そうに決まってる。だって私はベッドに入って1人で自分を慰めていたわけで...。多分そのまま寝ちゃったんだ。きっとそう。そんなこと思いながら目の前で私に覆い被さるようにして近づいてきた男の顔の前にストップ!とでも言わんばかりに手のひらをみせた。






『不審者!おばけ!』


「おばけじゃないよ」


『じゃあなんなの!?これは夢だ...!夢...ですよね?』


「さぁ...?どーかな」





カーテンの隙間からこぼれた街頭の光に照らされながら、不敵な笑みを見せたその男は、目の前に差し出された私の手を掴むと、静かに私の指を鼻に寄せて「美味しそうな香りがするね」なんて言って私を見つめた。言われた言葉に自分を慰めていたことを思い出した私はカッと顔と頭が一気に熱くなって、男の手を振り払おうと手に力を込めるのに、全く離れないその人の少し熱く感じる手の温度のせいで、先ほどまで熱っていた私の身体が余計に熱くなっていく。『警察、呼びますよ...』と、脅すように言った言葉に、男は軽く笑って私の指をパクりと口に含んだ。え?だか、ひゃ!だかよくわからない言葉が私の口から漏れた瞬間に、ヌルリと私の指の間を男の舌がゆっくりと這っていく。それだけなのに、なぜだか頭が溶けそうなほどに熱くなっていって、訳がわからないし、変な人に指を舐められてるこの状況から逃げたくて、思わず私の上を跨いでる男の股間目掛けて足をバタつかせる。ちゅっと小さなリップ音が部屋に小さく響いた後に、男はあはは、なんて小さく笑って「えっちな味」なんて眉を寄せながら私を見つめた。私は先ほどまでしていた自分の行為が余計に恥ずかしくなって、『もう、本当にやめてください!』と言いながらその人の手から自分の手を奪い返すように力を込める。






『な、なんなんですか?』


「うーん...夜這いってやつかな?」


『やっぱり、警察...』


「あはは、この状況じゃ出来ないんじゃない?」






言いながらその人が私の首筋に唇を寄せると、私は思わずギュッと強く目を瞑った。ヌルリと這っていく舌と共に恐怖を感じる筈のこの状況で、何故だか私の身体と頭が熱くなる。私がビクッと身体を強張らせた瞬間に、私の手がベッドへ押さえつけられて、シャツの隙間から私のお腹を知らない男の手が優しくなぞった。『やめ、て...』と、震えるような小さな声で呟くと「好きな人のことでも考えて」なんて馬鹿みたいなことを口にした男は、私のくびれを指でなぞった後にスルリと下着の上から胸に触れていって、「良い夢見せてあげるからさ」と更に意味のわからないようなことを口にする。いや、これ普通に強姦だし。こんなこと本当にあるんだ。ニュースの中の話かと思ってたのに、なんで私が...こんな目に。なんて悲壮感に浸っていた私の下着の隙間から胸の突起に触れてくる男の手はやけに熱くて、私の声が微かに漏れる。私は恥ずかしさから更に強く目を瞑ってギュッと下唇を噛み締めた。恥ずかしい、こんな、見ず知らずの人に感じるなんて、信じられない。多分、さっきまで自分で触ってたから、だから...。なんて、何も聞かれて無いのに言い訳ばかりが頭に浮かんだ。男は私の首筋に唇を寄せながら「変わらないね」と笑みを含んだ声で小さく呟いた。私は訳がわからないまま、男の愛部に耐えるように声を抑えながらベットに押さえつけられた手に力を込める。同時に胸の突起に触れた指が、捏ねるように動いたかと思えば、ギュッと優しく摘まんできて私の口からはまた甘い声が小さく漏れ出ていく。怖い、と思うのに私の下腹部が何故だか熱くなって、ジワリと濡れた様な感覚が下唇を噛む歯に力を込めさせた。私の首元を這っていく男の舌にゾクリとした瞬間、私の胸の突起を弄っていた手がスルリと下腹部に移動して私のズボンの中に侵入していく。ビクッと身体を強張らせるのに、下着を器用に避けて私の秘部の割れ目をなぞった男の指が、私の濡れたソコを滑っていった。






「あれ?もう、トロトロだね」


『ち、が...ッ...』


「良いんだよ、気持ちよくなって...」


『やっ...あっ...』


「此処も、コリコリしてる」


『あっ...!や、あ...っ...』






男の指が割れ目をなぞったかと思えば、私の愛液を絡め取る様に指を動かして塗りつけるように私の秘部の突起に触れていく。私は甘い声を漏らしながら逃げる様に顔を横に動かすと、男は私の首元に埋まっていた顔を耳まで移動させて「外と中、どっちが好きなの?」なんて囁きながら私の耳に舌を這わせる。私は囁かれたことでゾクリと背中に走る快感に身震いする様に身体を震わせながら、押さえつけられた手に更に力を込めていく。こんなの変だ。だって、知らない男にこんな事されてるのに、なんでこんなに気持ちよく感じるの。と、馬鹿みたいなことを自問自答して余計に身体に力が入っていく。秘部の入口に指が滑り降りると、「力、抜いて」なんて耳元で囁いた男の声がやけに低くて甘かった。『嫌』だなんて否定の言葉を口から漏らしたって、既に濡れそぼった私の秘部の入口は、男の指を抵抗なく飲み込んでいく。自分より少し太くて長い男の指は、私の良いところを探す様にゆっくりと膣壁を擦り上げながら奥へと進んでいった。






『ッ...や、抜いて...』


「こんなに俺の指締め付けてるのに?」


『ちがっ、そ、れは...やぁっ!』






男の指が私のある一点を押し上げる様に動いた瞬間、私の身体がビクッと揺れて、「あー...ここだね」と意地悪そうに笑った声が耳元で聞こえた。私は小さく首を振りながら、押さえつけられた手に力を込めて抵抗を見せるのに、男は私の良いところを擦り上げながら追い詰める様に小さく笑う。私はどうしたらいいのか分からなくて、逃げる様に腰を引くと「駄目だよ、気持ち良くならないと」なんて耳元で聞こえた男の低くて身体に響き渡る様な声にビクッと身体を震わせる。駄目、なんて思いながら感じてしまったその夜は、何度もイかされて私の頭は溶けてしまいそうになって、そのままこれが夢なのか現実なのか分からないまま、私は意識を手放した。


















『ん...』





いつものアラームで目が覚めて、昨日の夜に起きた出来事は夢だったのか、なんて夢を見たんだ。なんてギュッと目を瞑った私は、深呼吸をしてから布団からゆっくりと起き上がった。化粧して、朝ごはん食べて、会社に行く準備をしないと。と、いつものルーティンを頭に浮かべて、洗面所に行く途中に「あ、起きた?」なんて男の声にビクッと身体を硬直させて立ち止まった。え?誰か...家にいる?とホラー映画さながらにごくりと生唾を飲み込んで声のする方へ視線を移すと、ツンツン頭の男が目に入った。







『え...?』


「昨日は、ごちそうさま」






言いながらニコッと笑った男は昨日の夜、夢で見たと思っていた男の姿のままで、私のベッドに腰掛けながら眉を寄せて私を見つめた。驚きを隠せない様に瞳を揺らした私に、男は「また、食べさせてね」なんて言ってベッドから立ち上がると、壁に向かって歩き出す。私はまだ悪い夢を見ているんだろうか、なんて頬をつねるとピリッとした痛みが頬に伝った。あ、夢じゃ無い。って事は、この人は不審者で、勝手に私の部屋に入ってきた強姦魔だ。と理解したのは良いものの、目の前で壁をすり抜けるもんだから、叫び声なんて出やしなかった。驚いた様に口を開けている私に、壁をすり抜けたはずの男は顔だけ壁から出して「そういえば、挨拶してなかったね」と片眉を上げながら「隣に越してきた仙道です。よろしく」なんて言ってまた壁に消えていった。








いや、夢でしょ
(んな事あるわけない)



私は仙道と名乗った男が消えていった壁を見つめて立ち尽くしたまま、また頬をつねってみたけど、やっぱり頬は痛かった。









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